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我ら海の子

 轟くんはいじめられっ子だ。いつも容姿を理由に避けられて、仲間はずれにされる。無視もされるし罵声も浴びる。
 仕方ない事なのだろう。
 轟くんは首から上がタコで、手首から先がウミヘビなのだ。異形の者、というやつだ。
 周囲は不気味にうつる轟くんを追いやる事しかできないのだ。……私もそうだ。

 それでも轟くんは学校に来る。

 担任に指名されては教科書を読み上げ、テストで良い点を取り、水泳の授業では負けなしだ。
 そんな轟くんを、周りは薄気味悪い者として見ていた。
 頑張って学校生活に馴染もうとしている彼を、頑張れば頑張るほど「人外だ、人外だ」と指差して恐れ、遠ざけた。
 仕方ない事なのだろう……か?
 周囲に馴染もうと努力する者を、自分たちと種類が違うからといって拒絶するのは仕方ない事なのだろうか?
「と、轟くん」
 私は思い切って声をかける事にした。
 クラスメイトがどよめいて私を見ている。人間界の裏切り者でも見つけたかのようだ。
 轟くんはポカンと私を見ていた。地味な私が突然声をかけたのだ、驚いても無理はない。
「轟くんって、英語、得意?」
「あ、ああ、うん……一応は」
「よ、よかったら、その……教えてくれない? ほら、テストも近いし」
 轟くんは自分の手首から先を見ていた。ウミヘビがちろりと舌を出していた。タコの頭が戸惑ったように、私とウミヘビをギョロギョロと交互に見つめる。
「なんで僕に話しかけたの?」
 轟くんの言葉に、私は答えた。
「轟くんが努力して私たちに歩み寄ってくれてるのに、私たちが歩み寄り返さないのは、おかしいから。だから、平凡だけど、友達から始めたいなって……」
 彼は黙っていた。
 だんだん赤くなっていく彼を見て、私は呆気にとられた。

 陸上で茹でダコになるクラスメイトを初めて見た私は、大いに慌ててしまった。