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ペアルック

 かつかつとヒールを鳴らして、赤いジャケットを着て赤いタイトスカートを履いている彼女は、グレーの上着と白のブラウスでダークグレーのスカートを履く私の元まで、まっすぐまっすぐ歩いて来る。
 茶髪のボブカットで、グレーのフレームの眼鏡をかける彼女は、西野さん。
 とても気が強いけれど、顔は可愛らしい人。仕事もできるし、人望もあるけれど、趣味が悪い。
「ねえ、ちょっと」
 高圧的な態度で私を呼ぶ彼女は、ヒールの分だけ高くなった視線でこちらを見下ろしていた。
「何か?」
 私が返すと、西野さんは無遠慮に私の眼鏡を取り上げる。
 それがないと私は、目の前がぼやけて仕方ないというのに。
「なんで、この眼鏡かけてるのよ」
 西野さんは不機嫌そうだ。
 彼女が持っているのは、私の黒縁の眼鏡。
「あの眼鏡どうしたのよ」
「レンズが外れちゃって……修理中なんです」
「いつ直るの」
「明日には直りますよ」
「なら明日は絶対あの眼鏡かけてきなさいよ」
 つん、と顔を背けて拗ねたように言う西野さんは、私のあの眼鏡がお気に入りなのだ。
 赤いフレームの、細い眼鏡。
 彼女のテーマカラーと同じ、赤。
 私のテーマカラーであるグレーを彼女が身につけて、彼女のテーマカラーである赤を私が身につける。
 お揃い、というやつだ。
「東野さん、明日は絶対揃えるわよ、いいわね」
 そう言って私に執心する彼女が可愛らしい。
 でも、地味な私をパートナーに選ぶなんて、やっぱり趣味が悪いと思うの。