林さんはKYだ
クスクスと笑う声。
私を見て嬉しそうに顔を歪ませるクラスメイト。
教室にある私の机の上には、仏花が飾られていた。
机に黒いペンで「なんで学校に来るの?」と質問が書かれている。
椅子には画鋲がセロテープで固定されていて、見つけて言葉をなくす私を、クラスメイト達が更にクスクスと嘲笑った。
私の教科書はビリビリに破かれて、油性ペンで落書きされている。室内履きは踏み付けられて足跡だらけだ。
「学校に来るなよ」
面と向かって言ってきたのは、林さんだった。
クスクスと私を笑うクラスメイト達が林さんに同調するかのようにニヤニヤしているが、林さんは笑ってなどいなかった。
むしろ真剣な様子で私を見つめていた。
「学校に来るなよ。これ以上傷つけられるくらいなら、学校なんて来なくていいよ」
クラスメイトがポカンとしている。
「証拠を集めて警察か弁護士に相談しなよ」
担任の先生が慌てている。
「聞いてるのか、森さん」
「……うん、聞いてる」
「訴える時は私が証人になるからな? だからもう、こんな場所に来なくていい」
彼女はそう言って自分のカバンを抱えると、登校してきたばかりの私の手を引いて、学校の外へ連れ出した。
今度は私がクスクスと笑う番だった。
彼女の熱い真っ直ぐな態度がくすぐったくて。
声を殺して笑って。
口の端を上げて笑って。
鼻の奥が、ツンと痛んだ。