それを守護霊という
普段は空いていないマンホールの蓋が空いていた。
たったそれだけで、私の人生は終わった。
普段は開いていない屋上の扉の鍵が開いていた。
たったそれだけで、彼の人生は終わった。
普段は患者を診ない医者の目が節穴だった。
たったそれだけで、彼女の人生は……。
終わらせるものか、と私と彼は頷きあった。
見えない体で、透けている体で、病院の機器という機器を狂わせて、ナースコールを何度も呼んだ。
人為的なミスで人が死ぬのは真っ平ごめんなのだ。
彼女の容態が急変する。
ナースコールを呼ぶ。
医者が飛んでくる。
その中には様々な分野の医者がいた。
急遽オペ室に担ぎ込まれた彼女を見送って、私と彼は静かに祈った。
幽霊が出ると噂になってしまった病院で、噂の原因である私と彼は静かに祈った。
「よくもまあ、ここまでやるもんだ」
私と彼の背後で、人災を未然に防ぐ協力をしてくれていた「死神」が、呆れたように口を開くのに、人災で命を失った私たちは満足そうに笑うのだった。
オペが終わる。彼女が出てくる。息をしている。それを確認したら、もう充分だ。
さあ、役目は終わった。
天に上ろう。