守護霊らしい
人間をやめようと思って崖に佇んだ。
世の中、人間が生きていくには厳しすぎるようになってしまったから。
いっそ人間である事実を放棄してしまえば楽になれるかと思って、崖から身を投げることにしたのだ。
だが、上手くいかない。
何度落ちても突風が下から吹いてきて、崖の上にひょいと戻されてしまう。
何度も何度も続くので、私はとうとう人間をやめることをやめてしまった。さすがに落ち疲れたというのもある。
崖に背を向けて、私は家に帰る。生きにくい人の世に戻っていく。
人気のない駅のホームに立った時、駅の大鏡に私の全身が映った。
背後には、滝のように汗を流して、肩で息をしている烏天狗の姿があった。