ぶらん
口八丁手八丁で三人の首をつった狸が誇らしげに言う。
「俺ほどに人間をつるのが上手い妖怪もおるまいよ」
首をつらないかと声をかけて四人の首をつった坊主が対抗して言う。
「俺は小細工などせず力で何人でもつることができる」
真っ白な死に装束を着て首吊りの縄の前に立っていた鬼が、静かに言った。
「現代の日本人ほど自殺させやすいものはないよ」
皆、首をつって死なせる妖(あやかし)だった。
鬼のほうが何かを楽しむように口を開く。
「そのうち、線路も血の吸いすぎで妖怪になるんだろうね」
坊主も笑った。
「ならばマンション裏の地面は更に妖怪化しやすいだろう」
狸は商売敵が増えるのを嫌がりながら呟く。
「せめて水死なら置いてけ堀かミサキが担当なんだけどな」
ぶらん。
三人の会話に相槌を入れるように、首をつった人の体が風に揺れた。