紅白おもち
「恋をしました」
いちご大福が、頬をピンクに染めて言った。なんでも同じ和菓子屋さんの陳列棚で、好みの塩大福と出会ったらしい。
いちご大福を連れて、和菓子屋さんに行く。陳列棚の奥のほう。ツンとすました塩大福がいた。
「あのおもちです!」
あのお方、のような言い方で、いちご大福が言った。
「あのう、こんにちは、いちご大福です」
緊張したおもち……いや、面持ちで、いちご大福が話しかける。塩大福はこちらに気づくと、ペコリ、とお辞儀だけを返してきた。
うーん、塩対応。
いちご大福は口を開いた。
「一緒にお話をしませんか」
それは、塩大福を買えということだろうか。一つ二百円。
仕方なく塩大福を買い求めて、いちご大福の隣に置いた。塩大福は少し戸惑っていた。
「あのう、あのう」
いちご大福はもちもち……違う、もじもじしている。そして思い切って、塩大福に視線を向けた。目が合う。
「あなたがとても格好良くて、好きになってしまったのです」
いちご大福の顔は真っ赤だ。
塩大福は困ったような顔をしていた。
「君みたいなかわいいおもちとは、仲良しになれないよ」
「えっ、どうしてですか」
いちご大福が悲しそうな顔をする。塩大福は申し訳無さそうに答えた。
「私はメスのおもちなんだ」
いちご大福は、キョトンとしていた。
「王子様と思っていたら、お姫様でしたか」
「そうだよ。だから、悲しいけれど、おもちのカップルにはなれないんだ」
どうしてだろう。
「周りのおもちはみんな、オスとメスで仲良しになっていて、私もオスと仲良しにならないと」
それは違うんじゃないかな。
「えっ?」
いちご大福の飼い主として……いや、ひとりのおもち愛好家として言おう。
オスとかメスとかじゃなくて、どれだけ愛しいか、どれだけぷにぷにでもちもちで、魅力的か。
君の好みでいいんだよ。
塩大福はぱあっと明るい面持ちになって、いちご大福のもとに近づいていった。
「私とおもちのカップルにならないか」
「やったー! 喜んで!」
いちご大福はもっとピンクになった。
性別なんて些細なことだと、おもちたちが気づいて、もちもちふわふわになりますように。