長芋の、長い所
長芋が落ち込んでいる。
「すりおろすとトロトロになる僕は、ご飯にかけて食べるしかないんです」
どうやら、長芋メニューの種類が少なくて、落ち込んでいるらしい。
分厚く切った長芋をそのまま焼けば、長芋ステーキに。すりおろした長芋を小麦粉とキャベツと混ぜて焼けば、ふわふわのお好み焼きに。
細かく切ったマグロと長芋をわさびとポン酢で和えれば、パンによく合うおつまみに。
こんなにバリエーションがあるじゃないか。と声をかけた。
長芋は目をきらきら輝かせ始めて、やがて、すっくと立ち上がって言った。
「僕、長芋の才能があるかもしれません」
そうだよ、その調子だ。応援するからね。
自分の才能や魅力って、誰かから指摘されて初めてわかることもあるんだなあ、と思った出来事だった。
自覚できていない良いところが、沢山あるのだ。長芋も、僕も、みんなも。