この世で一番青いのは
青菜がおりました。
青菜とは、青々とした緑色の葉っぱをしげらせた、菜っ葉です。
青菜は言いました。
「この世で一番青いのは、わたしにちがいない」
なんせ、名前に青とついていますから。それはもう、大いばり。
いえいえ、お待ちなさい。と誰かが言いました。
青虫でした。
青虫とは、青々とした緑色のいも虫です。
青虫は言いました。
「この世で一番青いのは、ぼくにちがいない」
こちらも名前に青とついているのです。それはもう、大はりきり。
いえいえ、お待ちなさい。と誰かが言いました。
青りんごでした。
青りんごとは、青々とした緑色のりんごです。
青りんごは言いました。
「この世で一番青いのは、わたくしにちがいない」
名前に青とついている上に、おいしいのです。それはもう、大わらい。
いえいえ、お待ちなさい。と誰かが言いました。
青信号でした。
青信号とは、進んでもよいですよ、と伝える緑か青の信号です。
青信号は言いました。
「この世で一番青いのは、おれさまにちがいない」
名前に青とついている上に、ぴかぴか光るのです。それはもう大よろこび。
わたしだ。ぼくだ。わたくしだ。おれさまだ。
わあわあ言い合いになるのを見下ろして、青空が笑っていました。
青空は、何も言いませんでした。