猫祭りとアイスクリーム
三本足の猫を拾った。
後ろ足と前足が三本ずつある猫だ。
尻尾は四本生えていて、頭が二つある。
どうやら、結合双生児のようだ。
尻尾は……おそらく、化け猫になった際に二匹分の尻尾が分かれたのだろう。
名前はアイスとクリームにした。
ブラシで体を梳いてやると、はじめは気持ち良さそうにする。
あまりやりすぎると、三本足を使った三連猫パンチが襲ってくる。
アイスとクリームはふすまを開けて廊下に出たあと、振り返ってふすまを閉めていく。化け猫なんだなあ、としみじみ思った。
アイスとクリームは時折家の外に出たがる。事故にあうといけないので外には出せないよと注意するも、出たがる。
仕方がないのでキャリーケースに入れて、私も一緒に外へ出た。
みゃあ、と一回鳴かれたので左折して、みゃあみゃあ、と二回鳴かれたので右折して、みゃあー、と長く鳴かれたのでまっすぐ歩いた。
たどり着いた先は、猫の集会所だった。
様々な化け猫たちが揃って私を見ている。
「お待たせなのだわ」
なんと、アイスとクリームは猫集会の長だったのだ。
猫集会は真剣に執り行われた。
ご近所の餌やりお婆さんが周りの人から悪く言われないように、気をつけて過ごすこと。
猫祭りが近いので猫踊りの練習をすること。
にゃん、と揃って返事をした化け猫たちに、アイスとクリームは満足そうに頷いた。
「飼い主さんも手伝うのだわ」
向かって左のアイスが言った。
「猫祭りで、猫缶を食べさせてくれる屋台がほしいのだわ」
向かって右のクリームが言った。
拾った責任は果たそう。
頷いてみせると、アイスとクリームは嬉しそうに、みゃおん、と鳴いて、しゃがむ私の腰に首筋をこすりつけるのだった。終