ひまわりハムハムクイズ
「これから、デスゲームをしてもらう」
モニターに映るハムスターはふんぞり返って言う。私の足元にはたくさんのハムスター。みんな怯えている。
人間である私は巻き込まれたらしい。
「クイズに正解しなければ、ひまわりの種はもらえない、恐怖のゲームだ!」
たしーんっ、と小さな前足が机を叩く。
ひゃー、という悲鳴がこちらから響く。
「ひまわりの種がもらえないと、死んじゃいそうなくらい悲しい!」
「ふっふっふ、そうだろうそうだろう。おそれおののくがよい!」
ひまわりハムハムクイズは始まった。
第一問。
ハムスターの種類を三つ答えなさい。
ハムスターたちは硬直。頭が真っ白らしい。
そうか、ハムスターは自分がどの種類かなんて気にせず生きているだろうし、けっこう難問なのかもしれない。
「ゴールデン、ジャンガリアン、キンクマ」
代わりに私が答えた。
「そこの大きいハムスターは物知りだな」
デスゲームの主催者であるハムスターは、意外そうに私を見て言った。
人間ですよ。
クイズに正解した私のもとへ、ひまわりの種が送られてくる。十粒だ。
私はそれを周りのハムスターたちに分けてあげて、それから第二問に挑むことにした。
「主催者はなにハムスターでしょうか?」
「ロボロフスキー」
「むむう」
また十粒のひまわりの種が送られてくる。
私はそれを周りに分ける。
そこで気がついた。
周りに分けず、独り占めしてしまうとハムスター同士で争うことになって、おそらくそれがデスゲームと呼ばれるものなのだ。
しかしひまわりの種を食べない私が、周りに分配してしまったことで、デスゲームは成立しなくなってしまっている。
主催者は頬袋を毛づくろいしていた。
「なぜデスゲームをさせたいんですか?」
モニターに映ったハムスターに尋ねれば、主催者ハムは鼻をひこひこと動かして答える。
「うちのペットショップでは、ハムスターによる餌の奪い合いが当たり前だったからだよ」
つまり、餌をもらえていないのか。
「うんち臭いし」
掃除もされていないらしい。
「だから、ほかのハムスターも同じ生き方をするものだと思ったんだけど」
なるほど。それ以外の環境を知らないから、ほかのハムスターたちにも同じように接していたと。
私は、主催者ハムスターが不憫に思えてならなかった。
「ここから出してくれたら、私がそのペットショップをなんとかしましょう」
私がそう約束すると、主催者ハムスターは私のことをすんなり解放してくれた。素直なよい子だなあ。
私は公益社団法人に連絡して、ペットショップに警告してもらうことにした。そして、そのお店に就職した。
動物のお世話を一生懸命して環境を整えた。
職場で後輩もでき、店長の肩身は狭くなっていく。
「どうですか? もうデスゲームじゃないでしょ?」
一匹のロボロフスキーにこそっと話しかけると、そのハムスターは満足そうにペレットをかじりながら、うん、と頷いた。
そのロボロフスキーは、今では私の家で回し車を回している。
【終】