VANILLA
私の恋人は少し幼い。口調も行動も認識も。よく泣くし、よく笑う。嘘がつけない。
「君がいない時にいちごを食べたよ」
そんなことを素直に白状してしまう。
私が守ってあげなければ。と思っていた。
「痛いと思ってる?」
恋人がのんびりした口調で言う。
「私は別に……」
「ちくちくした気持ち?」
「会社でストレスは溜まったけど」
「おにぎり作ったよ」
「あ、ああ、そうなの?」
「おにぎりは美味しいから、ちくちくした気持ちが収まるよ」
恋人はのんびり言うと、私に向かって歪んだ形のおにぎりを差し出した。
「ありがとう」
「あのね、梅干しだよ」
食べるとしょっぱくて、ため息が溢れた。
守ってあげなければ。と思っていた。
違った。
守られていた。
幼さは弱さだと思いこんでいた。
柔らかさは脆さだと思いこんでいた。
違った。
包み込んでくれていた。
「君がいない時にアイス食べるよ」
「何味の?」
「バニラ」