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暑中見舞い

 足洗邸で足を洗っている足を洗った河童がいた。
 ややこしいので詳細に言うと、足洗邸の縁側で、たらいに水を張って足を洗っている、悪事から足を洗ったばかりの河童がいたのである。
 彼は緑色の肌がかすれるほど乾いていて、蚊取り線香と麦茶が置いてある盆を抱えて、足元の水を堪能していた。
「あちぃやねぇ」
 ぶつくさと文句をいう彼に、奥から出てきた女性が返す。
「けど夏だからこそ私らの出番でもあるじゃないのさ」
 彼女は本来首が伸びるはずなのだが、今日はひんやりとした保冷材を首に巻きつけており、伸ばすと暑いのかずっと縮めたままだった。
 まるで人間だ。
 押入れに篭っている座敷童が熱中症にならないようにふすまを開けっ放しにして、カキ氷を置いてやった。
「五郎ちゃんはまだ来ないの?」
「あいつは白井と古枝連れてくるからだいぶかかる。どっちも引きこもりだからなあ」
 白坊主の白井(しろい)とぶるぶるの古枝(ふるえだ)さえ来れば、色合い的にも涼しくなっていいものを。
 早く暑中見舞い二人を連れて、化け狸が来ないものか。河童とろくろ首は揃って首を長くした。
 ろくろ首は本当に首を長くした。
「いやだ暑い」