鏡の前でちょこちょこと前髪を整えること20分。お母さんの聞き慣れた「遅刻するっつってんでしょー!」なんて言葉は耳に入らない。誰も見てねぇよと言われればそれまでなのだが、気になるものは気になるのだ。


 昨日、髪を切った。あまりに勢いよく切ってしまったので、少し後悔してみたり。
 …まぁ後ろはいい。後ろなんざこの際諦めがつく。ただ気になるのはやはり前髪で、「まゆ毛くらいにお願いします」「分かりました〜、
まゆ毛ですね」なんて会話の数分後、見事に前髪の下からまゆ毛がこれ見よがしにのぞいていた。おい日本語は通じてるか?お姉さんよ。


 そんなわけで、今日は学校に行きたくない。
 跡部には絶対鼻で笑われるし、忍足には指さしで笑われるし、がっくんには指どころか全身で笑われるだろう。そのまま笑い転げて崖から落ちればいいのに!って、学校に崖なんかないっつの!崖っぷちなのは私だっつの!と自分でつっこんでみても空しさが増すだけだった。



「お、」
「あ、シシドーン」
「ポケモンにいそうだな」
「お、おはよう…」
「はよーす」


 ポテポテと憂鬱オーラを出しながら昇降口に向かうと、見知った帽子を見かけた。うわああ!宍戸だうあああ!絶対100%哀れみの視線を向けられるに違いない。そう思った私は早急に場から離れようとしたが、さすがはシシドーン、私を見逃さなかった。あ、ちなみにシシドーンは闇属性でコマンドは激ダサとちょいダサしかない。ダサいのはお前だと…なんてブツブツ言う私をほったらかしにして宍戸は「じゃ、俺日直だから」と何事もなかったように歩いていった。…あれ、スルー?



「は……」



 拍子抜けとはまさにこのことである。
 何?見えてないの?私のことはアウトオブ眼中?それはそれで悲しい。

 もしかしたら宍戸は邪気眼的ななにかを備えてしまったのかもと思ったが、あろうことかみんなが皆、私の髪型には触れずに1日が終わろうとしていた。


 …なんていうか、こんなことが

「あってたまるかぁああ!!」



「ねぇ!みんな!ちょっと!」
「…なんだ」
「わ、私を見て何も思わないの?」
「「……」」
「え、なに?かみ?」
「……」
「かみがなんだって?」
「か、紙っぺらみてーな胸してんなぐああっ」
「次!」
「かみかみレモンって、俺知らねーぜ」
「知らねえよ!てめーの事情なんかしらねーよ!」
「「髪切った?」」
「うあああああ!みんな嫌いいい」
「なんなんだよお前」


−−−−
ほんと何なんだよ…。

しえなさん、リクエストありがとうございました!
ほのぼのでも何でもないね!

ちなみに理想は
「やっば、予習すんの忘れてた」
「今日新しいとこ入るらしいぞ」
「まじかー」
「お前髪切ったな」
「あ、暑いんだもんしょうがないじゃん!」
「いいんじゃねーの」
「あ、そうすか…」

気にしてた自分が恥ずかしくなっちゃったりね!気づくけどさらっと流してほしい。
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