あからさまに目を反らされた。あんな苦しそうな顔、何年も一緒に居て始めて見た。呆然と玄関に突っ立っていると、姉ちゃんが困った顔で「蔵、話しよか…」そう言った。今は俺の部屋で、姉ちゃんはベッドに座っている。



「あんた、柚ちゃんに何したん?」
「何って…」
「あんな柚ちゃん、見たことないで」
「そ、やな…」


 沈黙を破ったのは、姉ちゃんの言葉。それが刃のように心に突き刺さって、苦しくなる。何って、俺にも分からへん。避けられているのは確かで、最後に名前を呼ばれたのだって何年前だろうか。昔はあんなに仲良かったのにな。



「あーもう!わからん!」
「…もう姉ちゃん言うわ!触れちゃアカンことやて思てたけど、アカンわこれ」
「…?」


 何かを割りきったように話し出す。今まで姉ちゃんに抱えられていたクッションは、ベッドの元の位置に戻っていた。



「あんたら一時期付き合うてたやろ?あんなに仲良かったのに、なんで別れたん?」
「……っ、」
「心当たり、それしかないやんか…」
「せやな…」


 そして俺は話し出す、間接的に嫌いと言われ、そのまま別れを切り出したこと。柚の苦しそうな顔を見ていられなくて、別れる選択肢しかなかったこと。
 姉ちゃんは真剣に聞いてくれた。



「そか…」
「“嫌い”の理由は聞かへん方がええなって思って、聞けんかった。もしかしたらそれを引きずって…」
「かもな」
「……」
「蔵は、まだ柚ちゃんのこと好きなん?」



 当たり前やん、俺はこくりと頷く。どれだけ避けられようと嫌われようと、やっぱり柚が大好きな自分がいた。でもそれは決して表には出さなくて、心の中に積もりに積もって1年と半年。しつこいんじゃなくて一途なんだと思いたい。


「そっかー!」
「どないしたん、急に」
「あたしな、二人とも大切で大好きやねん。せやから蔵と柚ちゃんには笑っててほしい」
「おおきに…」
「どんな形であろうと幸せになってほしいねん」
「おん…」


 さ、夕飯の準備手伝ってや!そう肩を叩かれて、姉ちゃんは部屋を出ていった。

 まだどうしていいか結論は出ないけれど。うーんと背伸びをして机の上の教科書類を片付ける。まずは行動に出てみよう、そしてもうすぐ受験、何かが変わるかもしれない。そう、信じたかった。
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