「小さい時からずっと好きだった…」
「えっ、…」
「もう限界なんだ!付き合ってほしい!」
「…うんっ!」



 只今の時刻は午後1時を回ったところ。私は教室の片隅でストーブの前をキープしながら、友人数人とお昼を食べていた。因みに文頭の台詞は友人による少女マンガの朗読で、それっぽい読み方なのがまた面白い。
 それが終わると同時にみんなからもれるのは盛大なため息。あ、このポッキー美味い。


「っはー、現実はこんな上手くいかへんっちゅーねん」
「あたし幼馴染みおるけど、恋愛対象に見れへんよね絶対」
「あ、3組の杉本くんやろ?見た目って大事やんなー」
「勇也は確かにイケメンちゃうけど人一倍優しい子ぉなんよ!」
「お、きたんちゃう?少女マンガ的展開」
「………どう足掻いてもないわー」
「ですよねー」



 はぁ、と再びため息をはく友人たち。私はというと、それを聞きながらも手の中にあるポッキーに夢中だった。さすが季節限定マロン味。美味い美味い、と食べていたら次の瞬間箱ごとひょいと奪われる。油断してた…!



「食べすぎると太るで」
「太ってもいいから好きなもの食べて生きたい、そんで死にたい」
「何の話やねん!」
「あ、せや。柚も幼馴染みおったやん。中等部の白石蔵ノ介」
「そういえば!」
「なぁなぁ、恋愛感情とかないん!?」
「あの子めっちゃイケメンやし!」



 白石蔵ノ介、中等部3年のテニス部部長。ルックス最高で誰にでも優しい、そんなモテモテでイケイケな蔵くんを幼なじみに持っている、全てが正反対の平凡な私。小さい時は本当によく遊んだが、今となっては顔もあわせないほど距離は離れてしまった。高等部に入学して会う機会が減ったのもあるが、きっかけこそ私が蔵くんを避け始めたのにある。

 今さら、恋愛感情なんて。



「ないわー」


 そう笑って自分の心をごまかしてきて、そろそろ三年目。
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