「……」


 この場合、俺はどういう反応をすればいいのだろう。何か大きな病気を持ってるわけでもない、至って普通の男子高校生。死なんていうものと無縁な生活を送ってきた。
 彼女はずっと笑顔のまま。視界の隅で、郵便配達員が赤いバイクをとめているのを見た。



「うん。えっと、それで君は?」
「死神の使いみたいな感じかなぁ。でも、死神!」
「…そっか」



 なんとなく、なんとなくだけど、彼女の普通じゃない雰囲気や姿に、もしかしたら本当のことなのかもしれないと心が傾いた。きっと、それは昨日の雨のせいだ。と、訳の分からない理由を並べてみる。らしくないぞ、俺。

 今度は足元を、かえるが一匹横切った。



「ねぇねぇ!せーちゃんって呼んでいい?」
「いいよ」
「せーちゃん!せーちゃんせーちゃん!」
「なぁに、…君の名前はなんだっけ?」
「死神」
「それは役職でしょ」
「…たまよりひめ、」
「たまちゃん?」
「そうし、はな、ささめ、ゆき…」
「え?」
「まだいっぱいあるよ!」



 にーっと笑ってみせる少女に、この時はじめて悪寒がした。さっきの笑顔と同じはずなのに、不気味さが潜んでいるような、そんな笑顔に見えてしまう。

 少し足を早めると少女もついてきた。少女と目を合わせないようにまっすぐ前を向いて歩く俺は、周りの人間の視線なんて知る由もなかった。


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