私のカバンはあの日以来重くなった。それもそのはず、いつ柳くんが辞書を忘れてもいいように、国語英和和英、さらには漢字辞典まで持ち歩くようにしているからだ。それが2週間ともなれば自然と慣れていくもので。肩こりなんかは愛の力で吹っ飛ばしてやるんだから!


「いや、それ慣れてないじゃん」
「慣れましたー、最近は肩こり小さくなりましたー」
「ていうか、なんか柚っていらん方向に突っ走るよね」
「柳くんがまた辞書忘れるわけないし」
「それ一回でも必要とされた?」
「うぐ…っ、これから必要とされる!はず!」
「肩が壊れないうちに、その“これから”が来るといいね」


 あきれたように話す二人は、一応私の友達だったりする。私が柳くんのこと好きって知ってるくせに、まったく無神経なやつらなんだから!



「そもそもそれ持ち歩く必要ないじゃん。ロッカーに入れとけば?」
「別に電子辞書でもいいしね」
「…あ」
「そういう選択肢はなかったのね…」
「そうだこの子バカだった…」
「バカじゃないし!柳くんがいつ消しゴムを忘れてもいいように新品の消しゴムも完全装備だし!」
「はいはい」
「シャー芯はHBもBもそろえてあるし!無論柳くんのため!」
「柳くんはH使うらしいよ」
「ぐあしっ、まじかそれ!今日買ってこよう」
「情報提供料として明日柚が作ったクッキーもってきてね」
「あ、私にも!相談料として」
「えぇー」
「柚、料理だけは上手いんだよね。料理だけは」
「フフン、仕方ないなぁ」
「その顔超腹立つ」
「あははっ」



 ちょうどそのとき、お昼の時間の終わりを告げるチャイムがなった。いそいそと自分の席に戻る私は、この会話を誰かに聞かれていたなんて、況してや柳くんに聞かれていたなんて少しも想像できなかったのです。


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