突然だが、私は柳蓮二くんが好きだ。どれくらい好きかというと地球一個分くらい好きだ。大好きだ。

 例えば、周りのアホな連中と比べてすごく落ち着いているところとか、勉強だけじゃなく運動もできるところとか。教卓にあるプリントを配布したり、心配りができるところとか。

 きっかけこそ忘れたが、入学してすぐに一目惚れ、三年生になった今でもその気持ちは変わらない。コッソリ見てるだけで、いや、彼が生きているだけで幸せだったけど、神様は私を見放さなかったらしい。三年生で同じクラスになり、更には隣の席になるという奇跡が起こった。




 現代文の時間、カリカリと黒板の字を写す柳くんにバレないように、そーっと彼を見る。ああ、今日もかっこいい。


 恋する乙女とはすごいもので、私は彼と同じクラスになって変わった。毎朝余裕をもって髪を結んでくるようになったし、授業にも少しだけ真面目に取り組むようになった。

 少し長い前髪を横に流して、またチラッと柳くんを見てみると、彼が何かを探しているのが分かった。筆箱、カバン、机の中をガサゴソと探している。忘れ物なんか滅多にしない柳くんには、すごく珍しいことだ。


 机の上を見てみれば、なるほど消しゴムがない。忘れたのかな。


(これは、貸すべき…?)


 仲のいい人には普通に貸せるのだが、いかんせん、柳くんとは隣の席になった今でも話したことがない。隣にいるだけで緊張して、心臓がバクバクなって。なんていうか、熱いものがこみ上げてくる感じ。そんな感じになるから。


(でも…、)


 再びチラッと柳くんを見る。ノートをきちんととる柳くんは、消しゴムないと困るよね。どうしよう。
 あああ、だけどなぁ!緊張するしなぁ!くそぅ、チキンな自分が恨めしい。


 散々心の中で葛藤した結果、やっぱり好きとか云々以前に、困ってる人がいるなら助けるべきだ、という結論に至った。こう考えれば自然に渡せるはずだし。…渡せる、よね?
 これが仲良くなるきっかけになればいいな、とかは少ししか思ってないからね、ウン。


 とりあえず、自分の消しゴムについてるケシカスをとり、黒いところを白くして、ハンカチでふいて。よし、後はさりげなく渡すだけだ。渡す、だけだ……あああああやっぱ無理だぁぁ。


 フンヌー!と自分に喝を入れるも、可愛らしく「これ、よかったら使って」と言えるはずもなく、コッソーリとそれを柳くんの机の端に置くことしかできなかった。

 だけど、柳くんはそれに気づいてくれて、一瞬驚いた顔をしたけれどすぐに微笑んでくれた。クラクラする。ポッと赤くなるのが分かって顔を伏せる私に、柳くんは言った。











「俺が忘れたのは辞書なのだが…」


 クスッと笑う柳くんは、きっと何もかもお見通しなんだと思う。とりあえず全力で謝ろうとしたら、授業終了を告げるチャイムが鳴った。


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