そもそも私は目立つ人が好きじゃない。勉強もできてテニス部部長でかわいい彼女もいて、加えて髪の色。私はどちらかというと白石くんが苦手だ。
きっとそういうすべてを持ってる人って、私みたいな平凡な人なんて道の看板ほどにしか見てないのだろう。自分が世界の中心だって、勘違いしてるのだろう。
そんな偏見と思い込みにまみれた自分に嫌気が差しながら、私はふと、隣の席の白石くんを見た。
「水瀬さん、おはよう」
「お、おはよ…」
私はすごくびっくりして、想像以上にイケメンだったこととか。なにより、私の目を見て、名前を呼んで、笑顔で挨拶してくれたことが嬉しかった。
私は白石くんのこと、なにも見ていなかったんだと感じた。
それから少しずつ話すようになったけど、元々私はそんなに口数が多い方じゃない。友達がいないわけじゃないけれど、休み時間の度に集まって、集団でトイレに行って、そんな女の子があまり好きじゃなかった。
本日何度目かわからないあくびをかみ殺しながら、窓の外を眺める。少しだけ曇ってる。でも、山の向こうは晴れてるみたい。
そんなとき、隣からいつものごとく忍足くんの声が聞こえた。ちょくちょく白石くんのところに来る忍足くんはいつも楽しそうで、二人の会話は聞いてるだけで楽しくて。空を見ながら、隣に耳を傾けた。
「あんな!俺昨日めっちゃすごかったんやで!」
「ほう、なんや言うてみい」
「コーラ一気飲みできた!」
「またそんな健康に悪いもんばっか食いよって〜!すごくもなんともないわ!」
「えー、ほなこれはどうや。……えー、本日は当店にお越しくださりまことにありがとうございます」
「なんやそれ!裏声ごっつキモい!」
「店内アナウンスや」
「どや顔すんなし」
「迷子のお知らせです。しらいしくらのすけくん、しらいしくらのすけくん。お母さまがお呼びです」
「はははっ、やかましいわ!」
危うく吹き出しそうになりながら、次の授業の準備をする。
ほほえましくて、聞いているだけでとても楽しかった。
「なぁ水瀬さんも今の聞いた?すごない!?」
「え、わたし…?」
「あーもう、ほんまお前笑かすなやっ」
「えー俺ごっつ練習したのに!」
「うまかった…かな?」
「「ほんま!?」」
やっぱり二人の笑顔は、私をおだやかにしてくれる。好きだな、と思った。
−−−−
これ長編にしたい