キーンコーンカーンコーンという、学生には1日10回は聞くお馴染みのチャイムが鳴った。だるかった英語の授業が終わり、うーんと背伸びをする。

 となりの女子に「次の授業なんやったっけ」と聞いてみれば「古典」案外そっけなく返ってきてすこし寂しくなった。

 だって、こてん、やで?三文字っておま!いや、次は古典なんだからしゃーないけど。


 机をゴソゴソ、あれ古典のノートどこやったっけなんて思いながらかばんの中を見てみる。……ない。
 再び机を見てみて、かばんをひっくり返してみたが、出てきたのは教科書数冊とチャレンジャーの消しゴムだけだった。


 サーッと血の気がひくのが分かった。古典の先生は学校でも有名な怖い先生で、助動詞ひとつ分からないだけで怒鳴られる。ちなみにコレは実体験。(「る、の文法的意味は?」「……現在推りょ「忍足ぃぃい!」)

 それがなんや、訳してきてないなんて分かったらどんな制裁が待っているのやら。


 あと五分しか時間がないのでノートを借りるしか手だてはない。
 白石は変な説教されそうやし、銀さんには悪いし、ユウジは確実にやってないし…。同じ講座の小春以外で頼めるやつは……!!




「頼む!!古典のノート貸してくれ!!」


 柚しかいない。悔しいがコイツしかいないのである。ちなみに柚は、窓際の席で優雅に本を読んでいた。



「栞」
「は、栞?」
「栞」
「や、栞がなんやて?」
「栞」



 こっちは時間ないねんボケェェというのはがんばって心中に留めて、ひたすらに笑顔をはりつける。意味がわからない。なに栞って、なんで栞?話かみ合ってないんやけど。



「すんません、低脳でアホな俺にも分かるよう言うてください」
「栞になるものちょうだいって」
「や、あいにく手ぶらできたもんで…。もってへん、デス」
「じゃあいいや」
「じゃあってなに!?いいやってなに!?いやいやこっちは死活問題やねん!いいからノート貸せや!」
「……」
「…すんません、ノート貸してください」
「だけ?」
「というのは?」



 とか言いつつ、心臓はばくばくである。あと2分、2分で決着をつけないかん。



「この前コンビニで抹茶味のピノ見たんだよねー」
「…!ほ、ほなピノおごるから!」
「……」
「ゆ、雪見大福も!!」
「……」
「ダッツも追加や!!」
「はいノート、抹茶味ね」



 俺の財布死亡確定。学生にダッツってかなりキツいんやで…。
 結局ノートの訳はかなり違ったし、怒られたし、何よりなんやろこの疲労感。
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