おじゃましまーす、と言って丸井宅に入る。台所を覗いてみたけどおばさんはいなくて、あら今日はブン太だけ?なんていろんな期待(間違ってもドキドキロマンスではない)をしながら階段を上がった。
 ところが部屋にはブン太と仁王がいた。「おー!」とか何とか言いながらヘッドホンを外すブン太に、布団にくるまり眠りこける仁王。あれ、今日って勉強会じゃなかったっけ。



「わかんねぇ、すでに色々わかんねぇ」
「何が」
「数学」
「友よ」
「それじゃだめだろ」



 というのも、次のテストで赤点とったらガチで進級の危機だから助けてくれ、というブン太に、期末の勉強をまったくしていなかった私は好機会として参加した。お互い得意科目を教えればよくね?そういうことだ。



「ちょっと待て、色々整理しよう。柚の得意科目は?」
「日本史と古典」
「仁王は?」
「…数学」
「そっか。ならいいか」
「ちょっと待て、ブン太の得意科目は?」
「ない」
「は?ない?」
「あ、あるわ家庭科!」
「必要ねぇ!」
「ただし実技に限る」
「さらに必要ねぇ!」


「じゃったらアレじゃな、それぞれ勉強しててわからなかったら聞く」
「仁王にしては珍しくまともだ。中身柳生?」
「ちげーよ」


 そんなこんなで数学を解きはじめる私。苦手は苦手なんだけど別にそこまでじゃないんだよね。例題見ればなんとなく解けるし。
 さてさて、問1は、



「はい!わかんねぇ!」
「早ぇよ」
「どこがじゃ」
「ここ。このSみたいなやつ何?」
「これはインテグラルじゃ」
「インテグラル?」
「積分」
「積分?」
「…ブン太授業聞いてた?」
「まったく」
「…まぁいいや、積分は微分された式を元の微分される前の式にすればいいんだよ」
「微分?」
「だから微分はー…って、え!?そこから!?」
「いったんCMでーす」
「いいともか!」
「やめだやめ、古典やる」
「じゃあ俺も古典やろうかの」
「よし得意分野きたこれ!」
「いづれの御時にかー」
「………」
「続きブン太だよ」
「…読めねぇ」
「は!?」
「お、おんなご…」
「にょうご」
「さらい…」
「こうい」
「あまたこうひけるなかに…」
「あまたさぶらいけるなかに」
「……丸井は古典からっきしじゃな」
「でも読みは覚えればいいから大丈夫間に合う。文法はわかる?」
「わからん」
「即答じゃな」
「たとえば、この給ふの敬語の種類は?」
「そ、尊敬…」
「よしOK。じゃあ誰への敬意?」
「えっと、お、俺…?」
「なんでだよ!!え、まじで言ってんの!?」
「わっかんねぇんだよ!だいたい古典なんか大人になったら使わねぇだろ絶対!」
「その前に進級に必要だろが」
「…うぅ、悪ぃ教えてくれ」



 みんなで得意科目を教えあうはずが、気づいたらブン太に教える会になっていた。まぁ元々そういう目的で誘われたんだっけ。
 仁王は勉強に飽きたのかPSPに夢中だし、ブン太はブン太で基本のきの字さえできてないし。帰っていいですか?

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -