「あーお腹すいたなー」
「飴玉あるよ。いる?」
「…おん」
「はい」
「あー明日学校休みやなー」
「そうだね三連休だね」
「11日12日13日休みやなー」
「そうだね三連休だね」
「休み明けは14日やなー」
「そうだね」
「あ、バレンタインや!アカン、今気づいたわ」
「へー」
「…お、お前は誰かにあげんのん?」
「さぁ」
「……」


「お前らなぁ…」


 さっきからこんなやりとりばかりする謙也と水瀬に、俺はため息をひとつついた。水瀬は「あ、バレンタイン?へー、そう」と一見興味がないように見せてるが、きっと内心は謙也の反応に楽しんでるんだろう。そして、それよりバレバレなのが謙也。欲しいなら欲しいって言えばええがな!そんな助けを乞う目をされてもどうしようもない。が、これ以上は見てられないので、助け船を出してやることにした。



「俺にはくれへんの?」
「何を」
「チョコ」
「いいよ」
「いいんかい!」
「お、おぉ…。ありがとな」
「クッキーでよければ」
「俺は!?俺にはクッキーくれんの?」



 よっしゃ、よう言った!よう言ったで謙也!と思った直後、水瀬からは予想もできなかった言葉が発せられた。因みに謙也はガッツポーズをしたままである。



「謙也にはあげない」

「「……え」」
「あげない」
「な、なんでや!謙也にもあげたれや!」
「イヤだ」
「……」
「け、謙也もそない凹むな!」



 助け船を出したつもりが、それは嵐にのみ込まれ見事に沈没したのでした。
 そんなこんなで月曜日。謙也は黒いオーラをまとったままである。



「元気出しや、謙也」
「…無理」
「あ、ちょうど水瀬登校してきたみたいやで」
「…アカン、俺急に腹痛が」
「なんでやねん!」
「帰ります」
「なんでやねん!」
「あ、白石。いたいた」
「おはようさん」
「おはよー。はい、これ」
「おおきに」



 きれいにラッピングされたクッキーをもらった。水瀬も意外と家庭的なとこあるんやな、とか何とか思いながら、そういえば謙也のことを忘れてたと気づく。もう開き直りや!謙也、と後ろを向いたが謙也はいなかった。
 ……いた。一回りくらいしぼんで小さくなったまま、教室の隅で負のオーラを出しながら体育座りをしていた。

 なんやこれ!俺こんな謙也見たことないんやけど!



「謙也は?」
「あぁ、あそこに」
「あー…」



 とか何とか言いながら近寄っていった水瀬。アカン、これでトドメでもさされたら謙也不登校になんで!
 慌てて止めようとしたが、驚いたことに水瀬は優しい顔をしてこう言ったのだった。



「チョコなら持ってるけど、いる?」



「そういえば、なんで謙也にはクッキーあげなかったん?」
「……」
「ええやんええやん、そんな細かいことぉ」
「ニヤニヤすな、謙也キモいで」
「……ほ、」
「ほ?」
「本命にはチョコあげたかったから…」
「「え」」
「ああああ!うるさい!うるさいうるさい!」
「いやあんたが一番うるさいんやけど」
「「……」」
「なんやその初々しい初恋な感じは!二人して頬染めんなや!こっちまでドキドキしてくるやろ!」

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