「あーもう!!」
「んだよ!びっくりしたわ」
「恋してぇえ!!」
「はいはい…」
マンガとかドラマとか見てていつも思うこと。“私も恋をしてみたい”
つらいこともたくさんあるんだろうけど、経験のない私にとっては楽しい面ばかりがキラキラと輝いて見えて。誰かにドキドキする感情とか、そういうの一度でいいから感じてみたい。
何度目か分からないそれを言う私を一瞥して、目の前の丸井はイチゴポッキーをぱくっと食べた。因みにこいつ、こんな女々しいものばっか好きなくせに、超絶可愛い彼女もちである。
「あー…」
「なんだよ」
「丸井死ね」
「なんでだよ!」
「あー…」
「あ、そういえばお前昨日あそこのスーパーにいたろ?」
「うん、いたよ。なんで?」
「たまたま見たんだよ。身乗り出して賞味期限の長い牛乳選んでたよな」
「っな!なぜそれを!」
「あとお惣菜とー、にぼしだっけ?」
「っぎゃー!!」
夕方にスーパーに買い出しに行くのはもはや休日の習慣になっている。牛乳はうまい。おまけに骨が丈夫になる。にぼしもだ。
しかし、それらを買うところを誰かに見られるとは思ってもいなかった。そりゃみんなのスーパーだし!誰がいてもおかしくないけどさ!
こんなこと丸井に知られれば…。
「お前オッサンみたいだな!そんなんだから恋できねぇんだよ」
ほらー!!ほら、絶対これ言われると思った!
ちょっと悔しくなったので、牛乳たちの素晴らしさを語る前に、私もひとつ質問をしてみた。
これで丸井も卵とか買ってたら、「お前こそ主婦か!」そう返せる。…いける!
「ま、丸井は何買ったの?」
「俺?俺はミルクティーとイチゴショートと、あ、あとタピオカ」
「OLか!!」
突っ込まずにはいられなかったんだ。とか、そんなんどうでもよくて。
何!?イチゴショートって何だよ!いや、イチゴショートくらい知ってるけども!
「可愛いなバカヤロー!!」
ずるいと思う。女の私よりも可愛いと思う。こんなことなら私も昨日レモンティーでも買っておけばよかった。
「…目が死んでるんだけど」
「完敗です」
まずは丸井に女の子らしさを学ぼうと思う。