奇妙奇天烈複雑怪奇。私の中で仁王雅治はこれ以上でもこれ以下でもない。1、2年とクラスは別々だったし、3年になった今でも話したことは一回もない。つかみどころがなくて、どこを向いてるのか分からない。

 …ま、別に分からなくてもいいんだけど。私はその銀髪の後ろ姿を被写体に、ノートにさらさらと鉛筆を走らせた。



「お、なになにー?お前仁王描いてんの?」
「な!」
「におー!!ちょ、こっち来てみー!」
「っはあああ!?」



 見られた。隣の席の丸井くんに。しかも勝手にクラスの男子(仁王雅治)をモデルにして描いた絵を。しかも、丸井は仁王と仲がいいときた。



(気持ち悪がられるよね…!)



 とりあえず慌ててノートを閉じる。仁王雅治を見てみれば彼はこちらに気づいていないようで、ホッとしたのもつかの間、仁王は後ろを振り返り「呼んだかー?」と言いながらこちらに来るではないか。



「どんな時間差攻撃だよ!」
「は!?」
「ちょ、丸井しばらく盾になって!その間私は存在を消すから!」
「お前そんなことできんの!?すごいな!」
「丸井の存在を」
「なんで俺なんだよ!」
「あー!あんなとこに空飛ぶピノが!!」
「そんなんで騙されねぇよ!」
「なんじゃ、騒がしいのぅ」



 見上げた先には仁王雅治。ズルっとなった私は、あろうことかノートを落としてしまった。先ほどの仁王の後ろ姿が描かれているページが開かれる。

 終わった。なんて器用なんだ私は。どんな偶然だよこれ。



「ノート落ちとうよ……え、」
「あ、いやあの!これは!」
「これお前が描いたんか?」
「あ、えと、はい、すみません!」
「……上手いな!」



 きっと私の顔はアホみたいにポカーンとしてるのだろう。じーっとノートを見たかと思えば眩しいくらいの笑顔を見せて席に戻っていった仁王雅治。ドキッとした胸を押さえながら、私は改めて思ったのだ。



その男、危険につき
(注意!)

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