弦一郎が結婚するらしい、と聞いたのはほんの少し前で、相手は大学で知り合った女の人だという。いくら大学が違うとはいえ、幼馴染みである以上相談くらいしてくれてもよかったのに。
 それでも一応今日の結婚式には招待してくれて。家に届いた招待状を見て、「あぁ、本当に結婚するんだ」私の中でようやくそれが現実になった。


 そして迎えた結婚式当日。淡い青のドレスに身をつつみ、高校時代の友人の席に私は座る。
 他にもテニス部の面々が来ていて、弦一郎と幼馴染みだった私は勿論彼らとも仲がよかった。同じクラスだった幸村くんは特に。



「まさか真田が一番に結婚するとはねぇ」
「ケーキ!このケーキ超うめー!」
「うめー!」



 なんていうか、みんなの見た目は少し大人びてる感じがしたのに、雰囲気は高校時代と何にも変わらない。ふと、前を見れば、関係者の方々に挨拶をしている真田とお嫁さんが幸せそうに微笑んでいて。隣に座っている幸村くんがコソッと話しかけてきた。



「俺は、真田は水瀬と結婚するんだと思ってた」
「…え?」
「付き合ってはなかったみたいだけど、二人には俺が入り込めない絆みたいなものがあったから」
「……」



 懐かしそうに話す幸村くんに、なぜか私も本音を話せると思った。弦一郎の結婚式、という場で、私のなかで区切りがついたのかもしれない。



「本当はね、私はちょっとだけ弦一郎が好きだった…」
「…そっか」
「うん」
「あ、ブーケトスやるみたいだよ?行ってきなよ」
「うーん、じゃあ一応行ってこよっかな」



 ぞろぞろと集まる女性陣の隅の方で、私は花嫁さんの後ろ姿を見ていた。本当に幸せそう。あとで二人に挨拶に行こう、そう思ってたら気づいたら花束が私の手の中にあって。



「え」



 あー残念、とか、よかったなお前!とか何とか盛り上がる中、人混みに幸村くんの姿をみた。何かを口パクで話している。…その何かはすぐに分かった。分かってしまった。



『結婚しよう』



 なんでだろう。私は弦一郎が好きだったはずなのに、幸村くんのことをどうしようもなく愛しく感じた。花束を持ち急いで駆け寄る。幸村くんにぎゅうっと抱きつく私を切なげに見る弦一郎がいたなんて、私はこれっぽっちも知らなかった。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -