「好きだ!」
「困る!」
「あーん?俺様が好いてやってるんだありがたく思え!」
「断る!」



 こんな調子でかれこれ1ヶ月。学園のキングに告白されたことは、最初は周りの目線が痛かったり私自身ちょっと恥ずかしかったりしたんだけど、今じゃもう誰もがこの状況に慣れ、誰も嫉妬や心配をしてくれなくなってしまった。そろって苦笑いである。そのうち私何かの病気になるんじゃないかな。



「あんたも大変ねぇ」
「おうよ…。しばらく女子トイレに引きこもりたい」
「……」
「はぁー…」



 好きだって言ってくれるのはありがたいと思うよ、一応。ほんの少しだけども!
 ただこう毎日毎日言われ続ければ、正直鬱陶しいというか、うん、ぶっちゃけ鬱陶しい。こうして友人にグチをこぼすのはもはや習慣になりつつある。


 次は移動教室なので廊下を歩いていた私たち。そんなとき、何かに群がる生徒たちを発見したので様子を伺ってみれば、何やらこの前の中間考査の英語の結果が張り出されているようだった。上位30名は名前が張り出されてるみたいだがそんなのは私にはこれっぽっちも関係ない。恐る恐る平均点と赤点ラインを確認してみると、どうやら赤点は免れたようで、友人と二人安堵のため息をこぼした。



「よかったぁ〜…」
「あ、柚見てみ。跡部くん一番だって」
「あぁ、うん、そだね…」



 跡部景吾ね、うん。容姿も頭脳も完璧なのに性格が残念すぎる。ていうかそもそもそんなすごい人がなんで私のことを好きなんだ?からかってる訳ではないみたいだし…。謎すぎる。

 と、そんなことを思っていたときだった。キャーキャー言う女子たちを引き連れて跡部景吾がこちらにやってくるではないか。何事もなく立ち去ろう、と思ったが時すでに遅し。跡部景吾に捕まってしまう。くそぅ、友人め逃げやがって…!



「あーん?俺様が一番だと?当たり前じゃねぇか」
「(イラッ)…おめでと」
「なんだ、お前の名前はねぇのか。そういえば35点だったな」
「英語は苦手なの!」
「でも、」
「?」
「前は24点だったじゃねぇか。上がったな」



 「ご褒美だ」そう言って跡部景吾が笑顔で私の頭にポンポンと手を置くものだから、「ここ廊下なんだけど」とか「なんで知ってんの」とか言いたいことは山ほどあるのに、そんなのは全部飛んでいってしまって。
 こんなこと誰にもやられたことなかったからなのかな、なんだか心がかゆくなって奥が熱くなるような、そんな気がした。きっと私の顔は真っ赤なんだろう。満足気に跡部景吾は微笑む。

 ずるい、ずるいよ跡部景吾のくせに。仕返しの気持ちをこめて、

―――ちゅ。


 頬っぺたにキスをしてやった。




「なっ……」
「跡部景吾一番だから、ご褒美ねっ!」
「……」
「さ、さよならっ!」

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