お風呂につかっても布団に身体を投げだしても、考えるのは周助のことばかりで。あの言葉を思い出す度にドキドキと鼓動が早くなる。周助が未だに私を好き、だなんて、二重の意味でわけがわからない。長い年月をかけて平静を取り戻したわたしの心は、周助の一言でいとも簡単にこんなにも大きく波立たせられてしまうのだ。


「ふーん。そんなことがねぇ」
「うん…」
「で、柚はどうなの?」
「…どうって?」
「不二くんのこと、どう思ってるの?」


 彼との再会は嬉しかった。好きだった気持ちは、ちゃんと吹っ切れた…はずなのに、周助の一言に笑顔を思い出す度に胸が熱くなって、どうしてか涙が出そうになる。前までとは全然違う、この気持ちは何なのだろう。


「みけん」
「え?」
「眉間にしわ、寄ってるでしょ?」


 電話越しに友人に言われて鏡を見ると、泣きそうでいて答えを出そうと考え込んでいる顔があった。私をこんな風にできるのなんて、周助しかいない。


「そんな難しく考えなくていいと思うけどな」
「……」
「ドキドキするなら、恋だよきっと。好きな気持ちを抑えてるんじゃない?」
「…うん」


 はっきりと言ってくれたことがありがたかった。全部見透かされていたんだ。
 高校時代の彼氏も、無意識に周助に似ている人ばかりだった。早く忘れなきゃ、と思えば思う程、彼のことをまだまだ好きになっていく自分がいた。顔も見てないし話をすることもなかったのに、私の心にはすべてが刻み込まれているのだ。


「好き、…だよ」
「うん」


 ようやく言葉にできた、私の気持ち。前に進まなきゃ、なんていうのに縛られて自分の素直な思いに背を向けてきた。
 なにかがストンと落ちたように、心が軽くなった気がした。

 お礼を言って電話を切る。アドレス帳に長い間いた周助の名前を、そっと消した。前までの幼い自分とはさようなら。
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