次の日も日曜日特有のあたたかな陽気に包まれた日で、私は毎日走った通学路でゆっくりと歩みを進めていた。中学時代によく帰りに寄った公園のベンチに腰をかける。

 ──何も変わってないんだ。
 この町には私の学生時代のすべてが染み込んでいて、思わず笑みがこぼれた。

 途中自販機で手に入れたリンゴジュースを一口飲んで、今度はブランコに座った。


「柚…?」


 ゆらりゆらりとブランコの揺れに身体をあずけていた時だった。背後からの声はひどく懐かしいのに、私はそれの持ち主が誰なのかがすぐに分かる。
 ばっと振り返って見ると、私よりもびっくりした顔の周助と目があった。


「周助、だよね。久しぶり!」
「久しぶり。なんか後ろ姿に見覚えがあって」
「ははっ、よく分かったね」
「こんな偶然あるんだね」
「ねー、びっくりした!」
「隣、いいかい?」
「あ、うん」


 携帯もあるし住んでいるところは変わらず近いのに、高校が離れてしまうとそうそう連絡をとらない。そんなことが寂しかった。
 周助と会うのは数年ぶりで、少しだけ身長も伸びていくらか大人びた彼に、ドクンドクンと心臓が脈をうち続けている。


「大人っぽくなったね」
「いやいや。周助も変わったね。でも、相変わらずモテるでしょ?」
「ははっ、そんなことないよ」
「またまたー。中学の時もいっぱい告白されてたじゃん。可愛い彼女もいたし」


 そこまで言って、頭がオーバーヒートして余計なことを饒舌に話す自分に気が付く。あっ、と言ってあわてて口をおさえた。今のは嫌味に聞こえなくもない。


「ごめん…」


 なんで泣きそうなの、私…。そんな私の様子を察知したのか(そういうところは変わってない)、周助が俯く私の顔を覗きこんできた。流れ落ちる髪の間から見える彼の表情は、ひどく驚いている。


「…もしかして、英二から聞いてないの?」
「…え」
「3年前のこと」


 どういうこと…?
 背筋をつたう冷たい汗に、嫌な予感がした。
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