どうしてこの時期になると人肌が恋しくなるのだろう。ガタガタと揺れる小窓は、寒風ふきつける冬の寒さを物語るのには十分だ。
ふと、何かの本で、冬を擬人化させたものを読んだことを思い出した。たとえ新芽の息吹を潜在しているとしても、私は冬に灰褐色の寂れたイメージしか持てない。
「白石、」
「どないした?」
「外、風すごいね」
「せやなぁ」
部室にふたりきり。
白石は私が好きで、私も白石が好きで。そんな関係なのに、あまりベタベタすることを好まない私たちは、この距離感をわりあいに気に入っている。でも、今日の私は違った。そっと、白石に身を寄せる。
「寒いんか?」
微笑みながら私の頭をなでる白石に、あぁ、私はやっぱり白石が大好きだ、と思った。返事の代わりにぎゅうっと抱きつくと、白石もまた私を抱きしめた。
「柚…」
「うん?」
「俺、今、めっちゃ幸せや…」
「わたしも」
白石の腕の中で彼の体温を感じながら、そっと、大好きだよと呟いた。
私の中で冬があたたかな色を持った瞬間だった。