今朝のテレビで、本日の最低気温は−13度です。なんてお天気お姉さんが笑顔で言ってたけど、やっぱり本当だったらしい。寒い。今日めっちゃ寒い。
 この間の席替えで窓際の一番後ろの席、即ちストーブの前の席を勝ち取った私は、朝練も行かずに教室でぬくぬくあたたまっていた。別にマネージャーなんか朝練いってもしょうがないしね。そもそもこんな時期に外でテニスをする方がおかしい。と、自己完結してたら後ろのドアから白石と謙也が入ってきた。


「おっつー」
「サボリマネージャーや、サボリマネージャー」
「白石聞いた?謙也がいじめる」
「なに?サボマネ」
「お前もか」



 だって行く必要ないじゃん、と言ったら、お前おらんと士気下がんねんなんて言葉をさらっと返された。ちょっと恥ずかしくなって、嬉しくなって、机の上のブランケットに顔を埋めた。で、思いっきり蹴ってやった。前の席の謙也のイスを。


「ちょお前、なにすんねん」
「…こっち来れば?ストーブあったかいよ」
「お、おぅ…」



 ちなみに白石は私の席の隣なので(なにこのテニス部勢揃いの偶然)、イスを近づけてストーブにあたっている。謙也が私を押しのけてストーブの真ん前を陣取りやがったので、足を踏んでやった。
 こっち来ればとは言ったけど、センターを譲るとは言ってない。



「お前の地味に痛いわ〜。ええやん別に、さっきまで温まってたんやろ?こちとらさっきまで極寒のテニスコートや」
「テニスコート日陰だもんね〜」
「はよ退け!」
「嫌だ!」
「なんでや!」
「寒い!」
「せやからお前、もう身体ぬくぬくやろ?」
「いやいや、普通に冬じゃん。寒いって」
「お前ら端から見たらめっちゃ醜いで…」



 醜かろうが寒いものは寒い!という私と謙也の言葉が重なった。すると何を思ったのか、白石が勢いよく背後の窓を開けた。間。私と謙也は見事にポカーン。んー、エクスタシー!なんて外に向かって叫んでる白石の髪が風でゆれた。



「さっむ!白石何してんの早く閉めろばか!」
「アカンアカンアカンアカン。死ぬでほんま!」
「思ったほど寒ないで。来てみ?」
「来てみも何も、私たちいま窓の下!」
「たまには空気入れ換えんとなぁ。最近風邪流行ってるんやて」
「そんなん俺らがこの風で風邪ひくわ!」
「いいぞ謙也!もっと言ってやれ!」



 寒い寒いとストーブの前で縮こまってた私たちは、白石の両腕によっていとも簡単に窓の前に立たされた。と同時に、来るであろう寒風に身構える。


「………」
「…あれ、寒くない?」
「せやろ?」


 隣でにやーっと笑う白石を見つめた。相変わらずブランケットはかぶったままだけど、びっくりするくらいの寒さじゃない。むしろ、もんもんとしていた教室の空気が爽やかな風によって浄化されている気さえした。なにより太陽の光があたたかい。



「太陽の光は脳を活性化するんやて」
「だってよ謙也!いっぱい浴びとけ!」
「お前もな!」
「…今日古典の単語テストあるけど」
「…それまじ?」
「まじまじ。ねえ白石?」
「おん」
「うっわ、アカン。そんなん俺聞いてへんわ」
「むつかし。これ絶対でるよ今日」
「きた、お前の全然当たらん予想」



 やばいわーとか言いながら席に戻っていった謙也は聞こえなかったかもしれないけど、白石が小さく呟いた「もう冬も終わるなぁ」という言葉が妙に心に残った。
 黒板の文字をノートに写しながら、窓の外を眺める。ふと前を見てみれば、謙也が机に突っ伏して寝ていた。白石はというと真面目にノートをとってるかと思いきや、こそっと盗った謙也のノートに落書きをしている。


 冬が終わるんだなぁ。当たり前のことなのに、なんだかしみじみと特別なことのように感じられた。


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トライアングルさまへ提出。
ありがとうございました!


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