柳とたとえばの話


「たとえば私が立海に来なかったとしてね、」



 彼女がたとえばの話をするとき、ふと視線を向ければ決まって口元に笑みを浮かべている。なにが楽しいのだろうか。俺には分からない。


「そうしたら、日々は実につまらないな」
「ううん、変わらないと思うよ」
「…何故だ」
「わたしがいなくたって世界はまわるもの」


 ふうわり、と彼女は微笑む。心地よい春の風が俺らを包んだ。スカートを優しく抑える手だとか、風に浮く髪の毛だとか、たったそれだけの行動に彼女は可憐さを秘めている。


「そうだな、今度は俺のたとえばの話をしよう」
「蓮二の?」
「あぁ。俺の世界は何でできてると思う?」
「うーん…、優しさ、かな」
「ほう」
「蓮二と同じ空間にいると優しい気持ちになれるから」
「しかし、それは他の人からは言われないな」
「……っ」
「俺の世界のほとんどはお前だよ。だから俺は優しい気持ちになれるし、お前の心もそうなるのだろうな」
「つまり、」
「そういうことだ」


 ふうわりと春風が吹いた。風になびく髪の間からのぞいた横顔は、なにかに怯えるように、静かに涙を流していた。


−−−−

柳にはこういう恋愛も似合うなぁ思って。
メモメモ。




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