裏の幸村の続き
と、見せかけて、テニスコートから姿を消した私は全速力で走っていた。キャンセルなんかするもんか。めちゃめちゃ痛いんだぞ!歯!幸村の怖さよりも歯痛が勝った私の心は、すでにチャリ置き場に一刻も早くつくことしか考えていない。
「よっし、」
幸村は追ってこない!きた!いやこの"きた"は、"来た"じゃなくて、"キタ"っていう、とかどうでもいいことを考えながらラストコーナーを回る。…私のチャリには、幸村さまが腰かけていた。
「何してるのかな?」
「…いや、ちょっとトイレに、」
「君の自転車はトイレってことか」
「違 う よ ね」
「調子のってるとイップスにすんぞテメェ。…あ、もしもし?今日は急用ができたんでキャンセルお願いします」
「わたしの携帯いつ盗ったの!?」
「ん?神の子だから」
「答えになってません」
「じゃあ、部室に行こうか」
「はい…」
ジンジンと痛む歯を押さえながら、幸村は忍者の末裔なのかもしれないと思った。
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