「あ、」
さて、これから放課後の部活!部室で着替える男たちに何にも感じないのは、マネージャーとして嫌でも免疫がついたのであろう。そして、そんなのも構わずに普通に着替えてる私。女としてどうなんだ。
財前が私のスカートを指差して言った。
「安ピン…」
「あぁ、昨日とり忘れちゃったのかな」
「ちょい貸して下さい」
「……待て待て待て待て!お前何する気だ!」
「ムシャクシャしたんで」
「ムシャクシャしたら耳に穴あけるんか!親からもらった身体大事にしろ!」
「安心してください、痛いようにはしませんから」
「って、私かいぃぃ!!」
何を言うんだこの男は!それだけ耳に穴開いてるのにまだ開ける気か、元々人間なんて穴だらけなのに更に開けるとかお前の最終目標は何なんだ、水死体か!そんなことを思ってたら、ふいに向けられた安全ピン。え、私が開けるの?まさか。
「いやいやいや、使い方間違ってるからねそれ」
「大丈夫っす、“安全”なピンですから」
「だから使い方違ぇんだよ!」
「俺かて3つくらい安ピンで開けたし」
「ひぇええ、怖!痛!」
「良いから黙って耳出せやこのメス豚」
「すみませんでしたァ!」
何なんですか、これ。恐喝ですか、私の意志はないんですか。っていうか私、先輩なのに…!
ふと周りを見てみると、部長はじめ部員はみんないなかった。とうの昔に哀れみの目線を向けながらコートに去っていったらしい。助けろよバカ!
「ざ、財前くん。そろそろ部活が始まるみたいだよ」
「部活なんかどうでもええっすわ」
「お前何しに来たんだ」
にやり。不敵に奴は笑う。これはまずいと思ったが時すでに遅し、私は財前の手中にいた。
テニス部の部室からは、マネージャーの悲しい叫びが聞こえたという。