今日は朝から学校中が騒がしい。3組の子が白石くんに告白したらしいよ、どうしようチョコ渡せるかな…。そんな声をよく聞く。なんたって今日はバレンタインデーだから。
 前の席の白石が、紙袋3つをひっさげて登校してきた。朝からその量かい、ニヤニヤすな!


「で、お前はくれんの?」
「調子のんなよハゲ」


 私だって仲いい友達数人と交換したもん!男子になんてあげるもんはないんだよ。色気<お菓子な私にとってはバレンタインはチョコをもらえる日でしかなく、だからこそ白石が憎かった。3つくらい分けてほしい。


「えー、俺楽しみにしとったのに」
「知るか、謙也を見てみな」


 白石の隣の席には、魂が抜けた謙也が机に突っ伏している。今年は朝から一つももらえないらしい。隣では白石が「今年は最高記録や!」なんてニヤニヤしてるし。空気を読め!


「…謙也、まだ朝だからさ」
「……おん」
「ひ、一つくらいはもらえるんじゃないかな?」
「…水瀬はくれんの?」
「うっ…」


 こんなことなら一つくらい余分に持ってくればよかった!休み時間の度に白石は廊下に呼び出され、抱えきれんばかりのチョコをもらっていた。うざい。私だって女の子にモテたい、チョコほしい。だからニヤニヤすな!
 そして、放課後の部室。私の隣には心なしか朝よりも死にかけてる謙也がいた。言うまでもないが今年の収穫はゼロらしい。なんかもう、ほんとごめん。


「見て見てー白石!ワイこんなにもろたでー!」
「よかったなぁ金ちゃん。せやけど俺も最高記録更新や!」
「はい、ユウくんあ〜ん」
「小春ぅぅ、これめっちゃ美味いでー!」
「せやったら部長、これももろて下さい。俺、こういうのヤなんで」


 金ちゃんと白石はもらった数の自慢大会をしてるし、財前は財前で何やら贅沢なことほざいてるし、ラブルスは普段通りいやいつにも増してラブラブだし。なにこの状況、テニス部空気読め!千歳はまだかー!
 隣では、謙也が泣きそうになっていた。アカン、これは見てられん!せめてハンカチくらい貸そうと思って、制服のポケットをごそごそと漁る。


「謙也、」
「……なん?」
「ほれ」

 ポトッと、謙也の手にあめ玉をのせる。昨日食べなかったやつが、偶然ポケットに入ってた。


「え?」
「あげる」
「…なん、え?」
「そんなんで悪いけど」
「バレンタイン?」
「うん」
「……お、おおきにー!!」


 謙也がぎゅうっと抱きしめてきた。痛い。それに気付いた白石と金ちゃんに、自分にはないのかとせがまれ(贅沢言うな!)、財前には呆れられた。謙也を叩きながら思う。

 あれ、謙也ってモテるのに。なんで今年はもらえなかったんだろう。



(だって、忍足くんって水瀬さんと付き合うてるんやろ?)
(皆、遠慮してんねん)



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