氷帝学園の食堂というものは庶民が簡単に行けるところではない。金額も0の数を数えるので精一杯だし、前友人の奢りで行ったときはその美味しさに本気でほっぺたが落ちるかと思った。感動した。

 そして、もう二度と足を踏み入れることはないだろうと思っていた氷帝学園の食堂に、私は今来ている。
 ことの始まりは昨日の部活の後のことだった。



「あーん?お前ら食堂に行きたいらしいじゃねぇか」
「うん」
「仕方ねぇ。俺が連れてってやるよ」
「……え」
「俺が全部奢ってやるっつってんだ」
「なんの風の吹き回しですか怖い」
「お前ら庶民にはめったにない機会だろうからな。遠慮しないで食えよファーハッハッハ!!」


 最後のはまぁちょっとムカついたが、本当にこんな機会はめったにないので、私と宍戸とがっくんは跡部の言葉に甘えることにした。何食べようかな何食べようかな!昨日の夜楽しみすぎて寝れなかったとかは秘密なんだからね!



「さぁお前ら、遠慮せ」
「はーい!まず俺ね!納豆定食と納豆トーストと小粒納豆!」
「がっくんばっかズルい!私オムライスとスパゲティときつねうどんね!」
「お前らバランス悪すぎなんだよ、激ダサだぜ。俺、野菜炒めとしょうが焼き定食と揚げ出し豆腐と焼きおにぎりでご飯は大盛りな」
「ちょ、おま」
「っあー!宍戸一つ多いよずっこい!私もデザートでショートケーキとスーパーデラックスいちごパフェ追加!」
「お前も多すぎなんだよ!俺も小粒納豆とひきわり納豆と納豆プリン追加な!」
「ちょっと待て!お前らそれ全部食べるのか…?」
「え」
「当たり前じゃん」
「何を今更」
「多いだろ、どう考えても!」
「跡部が遠慮せず頼めっつったんだろ!自分の言葉くらい最後まで責任もてこの俺様ホクロ野郎!!」


 もちろん、私たちは獣が生肉を食す勢いで完食した。納豆まみれのがっくんを見て、「食欲失せた…」と言っていた跡部の顔色が悪かったりした。オムライスのケチャップさえも美味しいとか、セレブは普段から羨ましいなと思った。

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