私、この春に父親の転勤により左遷され、沖縄県の比嘉中に通うことになった水瀬柚と申します。沖縄はいい。いい人ばかりだし海は綺麗だし、何より夏は死ぬほど暑いけど冬の寒さが全然ない!ただね、何が困るってね。

 沖縄弁が全然分からないんだ!


 え、ここ日本だよね、ここどこ?わたし誰?みたいな。授業中も、

「くぬ筆者や俳句んでぃいーんもぬや読みてぃーぬ考えで」
「やー等分かっのみぐさぁ〜か?」
「うー!」

 とか、ええええ全っ然分かんないんですけど!そんな言語の壁に打ち拉がれていたとき、私は天使に出会った。名を木手くんというらしい。標準語を話すことのできる彼は私にとって頼もしい以外のなにものでもなくて。翻訳してもらうために、ひたすら彼のうしろについて行動していた。そして出会ったのである、本物の天使というやつに…!

 名を、甲斐裕次郎くんというらしい。一目惚れだった。楽しくテニスをしてる姿とか、はにかむように笑う顔とか。そして木手くんに協力してもらい、ようやく告白にたどり着いたのだが…。




「す、好きです!!」
「…ぬーやが?(何が?)


 だめだ、ぜんっぜん分かんない。ぬーや…?はいってことかな、自分もだよとかだったら嬉しいけどもし違ったら恥ずかしいし。うーん、何、何が言いたいんだ甲斐くん。私は、とりあえずあたりさわりのないように話を続けた。


「本当、かっこいいなって」
「ぬーやが?(何が?)
「好きなんだ、よね…」
「ぬーやが?(何が?)


 だめだ、さっきからぬーやがばっかりだ。ぬーやがって何?私怒られてんの好かれてんの嫌われてるの…?全然分からない。甲斐くんはしばらく首を傾げて悩んでいて(返事を悩んでるのかなっ!?っていうか首傾げてる甲斐くんやばい可愛いっ!)、ようやく何かに気づいたようだった。


「ゆーしーねー、永四郎がしちゅんばぁ?(もしかして、永四郎が好きなんか?)
「は?木手?」
「そういえば、仲良かっのみぐさぁ〜よな(そういえば、仲良かったよな)


 え、木手?仲良い?木手と私が?いや、仲良いのは仲良いけど、なんで今そんなこと……って、もしかして甲斐くん、木手に嫉妬してるのかな!そうしたらすっごい嬉しいんだけども!(しかし甲斐くんはすごく笑顔だ。…なんで?)

 ていうか、ゆーしーねーって、you死ねとかじゃないよね大丈夫だよね。だって私ら知り合って少ししかたってないし!し!嫌われてはないはず!たぶん!


「大丈夫、木手はただの友達だよ!」
「永四郎はゴーヤがしちゅんってあびてぃのみぐさぁ〜よ!(永四郎はゴーヤが好きって言ってた!)
「いや、だから木手は…」
「ゆいまーるするね!(協力するから!)


 ゆいまーる?ゆいまーるってなんだ。なんなんだ。もう訳が分からなくなって、ため息をはきそうになりながら再び甲斐くんを見てみれば、彼はすごく笑顔で手を握ってくれた。相変わらずよく分からないけど、し、幸せすぎる…!!「いいーうゎーちちやんやー(良い天気だね〜)」とか「水瀬みーちや夕焼けしちゅん?(水瀬さんは夕焼け好き?)」とか、結局何がいいたいのかよく分からなかったけど、今日は甲斐くんと話せたしこんな間近で笑顔を見れたので、とてもとても幸せでした!私、諦めないんだから!


天然×沖縄弁
だめだ、全然分からない…!




「木手!私頑張ったよ!脈ありかも!」
「甲斐くんには頑張って、と言われたのですが」

――――
沖縄弁翻訳サイトでやりました。間違いありましたらすみません。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -