いつ頃からか、赤也はよく3Bの教室に来るようになった。ほら、今日の昼休みも。おかげで友達とのおしゃべりはお預け、赤也の相手になることで手一杯である。
「あ、」
そうだそうだ、忘れてた。私は、最近買った来年の手帳を机の上に広げた。
「何だよ、それ」
「あまりにも予定が少なくて寂しいから、みんなの誕生日教えて!」
「俺、12月4日ー」
「はい、仁王12月4日ー」
「4月20日!プレゼントはお菓子でいいぜ」
「はい、丸井4月20日ー」
「無視かよ!」
「赤也は?」
「俺は9月25日っす」
「りょーかいっ」
ページをパラパラとめくり、筆箱の中にあった唯一の色ペン(青)でみんなの誕生日を書いていく。よしよし、これで少しは寂しくないぞ。
「しっかし、本当に予定ないの〜」
「土日が真っ白だな」
「うっさい!」
まったく失礼な奴等だ。私だって予定くらい……、そういえば土日って何してたっけ。気の赴くままに散歩したり日向ぼっこからお昼寝したり、私の土日って何なんだ。ぼんやりとそんなことを考えてたら、赤也が私のペンをひょいと奪うのが見えた。
すると、赤也はいつもの汚い字で今週末の予定のところに、『デート』と書いた。もちろんそれは私の手帳で。ほんと、きったない字だな綺麗に書こうよ……え、デート?
「日曜日、俺予約ね」
「え?」
「部活休みなんで、付き合ってあげます」
にっこり笑う後輩に少しだけときめいたなんて、錯覚だと信じたい。