「お前、好きな食べ物何?」
「米」
「他に」
「肉」
「もっと可愛らしいのないのかよ!」
「生魚」
「普通に刺身とか寿司とか言えばいいだろぃ!」



 まったく、うるさい奴だ。米と肉と生魚が好きなんだからしょうがないじゃないか。

 丸井と隣の席になってからというもの、休み時間のみならず今みたいにホームルームの時間まで話しかけられるようになった。別に嫌いじゃないし楽しいからいいんだけども。んー、としばらく考えてから、金平糖!(これなら可愛らしいよね?)そう言おうとしたら、見事に声が重なった。誰と、って隣の丸井ブン太と。


「へぇ、丸井も好きなんだ」
「おう!」
「美味しいよね」
「おう!って、そうじゃなくて」


 丸井は右のポケットと左のポケットに手を突っ込んで、「あれ、ない」と言っている。何がないんだろう、ボーッと丸井を見ていたら、急に視界にドアップの丸い何かが映った。


「び、びっくりした…。何?」
「金平糖!」
「は?」
「だから金平糖!好きなんだろ?やるよ」


 そう言って、丸井は私の手のひらに小さな白い金平糖をのせた。ありがとう、そのまま口に運ぼうとしたら、丸井にそれを遮られる。机を寄せてきて、コソコソと耳元で話しかけられた。


「それ、仁王んとこから持ってきたヤツだからな。内緒だぜ」
「仁王って、仁王雅治?」
「おー」
「アイツ、甘いもの食べるんだ」
「とりあえず内緒だかんな!」
「うん」
「前見つかったときは色々悲惨だったから、今回は水瀬も同罪」
「は?」
「さすがのアイツも、女相手に手は出せねぇだろ」


 お前もそれ食べたら同罪なんだからな!再びそう言ってきた丸井の目は、早く食べろと訴えている。ていうか、色々悲惨だったことに私を巻き込むのか、この男は。私は、手のひらにある白い金平糖をしばらく見つめ、丸井の口に放り込んだ。案の定、丸井はびっくりしている。


「おいしい?」
「あ、まぁ、普通に」


 丸井が言いきらないうちに、私は丸井にキスをした。大丈夫、一番後ろの席だもん、誰も見てない。案の定、丸井はびっくりしていて、やった、作戦成功!なんて。


「ほんと。甘いね」
「お、う…」


 にっこり笑って、今度は私が耳元で「これで私も同罪だね」なんて言ってみれば、丸井はようやく状況に気づいたようで。「バッカ!ここ教室だぞ!」って下敷きで叩かれた。意外に痛いんだよね、これ。
 この後仁王雅治に怒られたのは言うまでもない。


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