本当に偶然だった。たまたまその前の日に友達からもらったシールを携帯につけてて、たまたま二階の渡り廊下を歩いていて、たまたまもじゃもじゃヘアーの先輩とぶつかってしまった。瞬間、上履きの色で先輩と判断した私は、とりあえず謝った。「ご、ごめんなさい!」謝って、すぐに立ち去る………つもりだった。

 少しだけ歩いたあと、先輩の「おー、おー」という声が聞こえた。私?まさかね、なんて振り向いてみればニッコリ笑った先輩と目があって。なぜこの先輩は私の腕を掴んでいるのか。



「え?」
「これ、落としたろ?」
「あ、」
「な?」
「あ、ありがとうございます」


 先輩の手に握られていたのは私の携帯で。お礼を言って受け取ろうとしたら、先輩はそれを離さない。何なんだ、そう思って先輩の顔を見てみれば、満面の笑みとキラッキラした目で見られた。そしてそのまま肩をがっしり捕まれて、前に後ろに揺らされる。ああああ、お昼の焼きそばがリバースするから止めてくださいー!



「トトロ!!」
「ちょ、ま、な」
「これ!!トトロ!!」
「と、ととりあえず、落ち」
「トトロたい!!」



 目の前のでっかい先輩はひたすらに笑顔で「トトロ!トトロ!」と叫んでいる。周りの目もあるし、何より焼きそばリバースするから止めてくれ。必死に先輩を引き剥がし、落ち着いて状況を見てみれば、先輩はどうやら私の携帯の裏に貼ってあるトトロのシールに反応したようだった。


「トトロ、好きなんですか?」
「大好きったい!むぞらしか〜!」
「(むぞ…、?)可愛いですよね、トトロ」
「トトロもお前も大好きったい!!」
「は?」
「好いとうよー!!」
「いやいやいや、」


 待て待て待て。今の流れでそれはおかしくないか?何度も耳を疑ったけれど、先輩に抱きしめられてる今の状況を見ると嘘ではないらしい。抱きしめられてるっていうか、若干苦しいんだけども!

 人目もあるし、何より頭がついていっていないので再び先輩引き剥がせば、先輩はこれまたニッコリと私を見て「トトロ!」と叫んだ。おいコラ、それは私がトトロだということか。


 これが私と千歳先輩の出会いなのでした。





「なんかおかしくない!?」
「トトロ好きに悪いもんはいなか〜」



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