朝、仁王雅治が「はよー」と言ってきた。私は困った。仁王雅治の目を見れないからだ。しばらく下を見ていると、仁王雅治が覗き込んできた。私は焦った。焦った勢いで、仁王雅治の顔に裏張り手をくらわしてしまったのである。これが、今朝のこと。


 では、何故、仁王雅治の顔を見れなかったのか。胸がドキドキしてとか、そんな乙女チックかつロマンティックなものではない。昨日の夜、こんなメールがきたからだ。



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12/1 22:38
From:仁王雅治
Sub:パンツについて
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パンツは普通履くものだと思う。
しかし時に被るものになり得る。
それだけのことである。

葉っぱはいけないよ。
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「ねぇねぇ丸井」
「ん?」
「…昨日、仁王なんかあった?」
「ないけど。…なんで?」
「パンツなくしたりとか」
「だからねぇって」
「じゃあ昨日、仁王と何した?」
「あ、仁王ん家泊まったわ」
「なんで?」
「なんとなく」
「パンツだから?」
「や、意味わかんねぇ」
「仁王ってパンツ好きだっけ?」
「知らねぇよ!そんなん本人に聞けばいいだろ!おい、にお、」
「ばっか!!てめぇバカか!!」


 こっちがせっかく仁王から丸井を引き剥がして隅っこで小声で話しているというのに。こいつは大声で仁王の名前を呼びかけた。丸井の“ま”は“まるで空気が読めないアホ”の“ま”だな。

 「いや、実は…」と言って、私は話し出した。昨日変なメールが来て…。そうして例のメール画面を見せると、丸井は止まった。


「あ」
「あ?あって何?」
「…な、何でもない」
「私、もう仁王が分からんわ」
「……」
「いつもの私で接することができなくなりました」
「…そっか」


 そのとき、ふいに肩に重さを感じた。見上げてみれば、なるほど、仁王雅治である。………に、仁王雅治ぅぅう!?
 私は持っている全ての力を使って、最上級の笑顔をはりつけた。


「なんじゃその顔」
「べ、つに…?」
「まぁいいわ。おまん、英語のノート見せてくれ」
「いい、よ」
「……?」
「ハッ…!(いつもの私と違う…!?)」
「机ん中にある?」
「こんのボケ野郎!宿題くらい自分でやらなきゃ、ダメになっちゃうぞぉ☆」
「………」
「………」
「………ぞぉ、」

「俺、水瀬が分からん…」
「仁王にだけは、言われたくない…」


 事の真相が分かるのは、これから10分後のこと。


「(やべぇ、昨日仁王の携帯からイタズラでジャッカルに送るメール、間違えて水瀬に送っちまった…)」


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犯人は丸井くん!

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