最近寒いよね。せやな。そんな当たり障りのない会話をしつつ、私はキョロキョロと視線を泳がせてアイツらを探す。きっと謙也と健ちゃんも同じだろう。

 いないのだ。あのバカ三人が。エクスタシー野郎と無我マニアとごんたくれが。昨日からやれポッキーの日だ、やれプリッツの日だ騒いでたヤツラが、今日何か事を起こさないわけがない。


 次の瞬間、バンッと勢いよく扉が開く。あーあ来たか、謙也と健ちゃんと私は同時にため息をはいた。



「日本全国!!」
「否、四天宝寺テニス部!」
「ポッキー化計画やー!!」


 ヤツラはとびきりの笑顔で溢れんばかりのポッキーを抱えて飛び込んできた。まったく期待を裏切らないヤツラである。


「「………」」
「あ、財前、そこの私のカバンとって」
「これっすか」
「うん、そう」
「……」
「日本ぜんこ「いやいや、聞こえてるから!!」」
「せやからオドレらは何が言いたいねんうっといわボケ」
「ユウジの反抗期はまだ抜けんのかー。小春、コレ会計で頼むわ」
「了解、蔵リンっ」
「いやいやいやいや、待て待て待て待てぇー!!」
「俺が見間違えたんかな、せやそうに決まっとる。ポッキー×○個なんて書かれたレシート、会計で処理するわけないもんな」
「お、謙也って視力よかったっけ?」
「オィィイ!ポッキー代部費でおろそうとすなぁぁあ」
「ええやん別に、減るもんやないし」
「いや減るだろ、確実に諭吉さん飛んでくだろ」
「なぁコイツ部長でええんか…」



 「なぁなあそれより、早よポッキー食べへん?」金ちゃんが私のスカートを引っ張りながら上目使いで見てくるもんだから、危うく意識が飛びかけた。いかんいかん。


「なぁなぁ、柚姉ー!」
「ドッキューン…!私は今ハートを打ち抜かれました、ぐはっ」
「ナイス金ちゃん」
「ほれ、ユウジと小春にも。ポッキーの日言うたらポッキーゲームたい」
「え、」
「イヤーン千歳クンたら、だ・い・た・んっ」
「こここここ小春っ、ポポポポポポッキーゲーム、や、やろかっ!」
「嫌やわ、恥ずかしいも〜ん」
「そげんこと言わんと。はよやったい」
「なんで千歳はこんなにポッキーゲームやらせたいの」
「あ、復活した。早っ」
「さりげなくピノ持ってますね、千歳先輩」
「あ、ほんとだ」
「きゃっ、近いわユウくん…っ」
「…アイツらほっとこか」



 ラブルスはポッキーゲームしてるし、健ちゃんはいつの間にかどっか行ってるし。金ちゃんはひたすらにポッキー食べてるし(ねぇ君それ何箱め?)、財前はまったく付き合ってられないという顔をしている。本当に付き合ってられない、しかしポッキーはいただく。ポキッと、極細のそれを口にいれた。



「アカンアカン!柚アカンわ!」
「何がアカンのどすか。私にポッキー食べるな言いたいんかボケェ」
「せやのうて!」
「そこは左下にふりながらポキッとせんと」
「笑顔でな」
「決め台詞もほしいな」
「語呂がよくて言いやすくて、テンポがいいのがええな」


 おい、いつの間に謙也はそっちの世界に行ったんだ。健ちゃんがいなくなった今、正常な判断をできるのは私しかいない。くっそー。それにしても、なんだ。慣れないツッコミばかりやっていたせいか、


すごくボケたい…!!


 この時点で、部室内はおかしな集団の巣と化してしまう。



ポキッ
「サランラップ!」


「…いや、え?そない笑顔でサランラップ言われても」
「なんでサランラップやねん!それポッキーと何も関係ないやん!」
「柚、それはさすがにないたい…」
「いやいや、みんなが語呂がいいのっていうから。超言いやすいよサランラップ、ほらみんなも言ってみ?」
「サランラップ」
「サランラップ」
「サランラップ、ってなんでやねん!」
「はい次、白石の番。日本全国ポッキー化計画なんでしょ、ちゃんと宣伝もしないとね」



ポキッ
「んーん、エクスタ「はい次ー」」


「ちょ、最後まで言わせてや!」
「黙れ変態」
「くたばれ変態」
「ポッキーに刺される夢見てろ変態」
「扱いひどない!?最後のやつに限っては何が言いたいねん!」
「因みにこれは私が昨日見た夢です」
「見たんかい!」
「お前らが一週間前からポッキーポッキーうるさいからだろーが」
「次、謙也ばい」



ポキッ
「……」
ポリポリポリポリ
「浪速のスピードスゲホッ、ゴホゴフゥ!!


「ちょ、大丈夫?謙也」
「ア、アカン…器官、に…ゴホッ、ポッキーが…!」
「そげん早く食べっからたいね」
「なんでそんなことすんねん」
「ノースピードノーライフやからや!」
「たしかに謙也からスピードとったらノーライフだからね。生きてる価値ないからね」
「なぁ、うちのマネージャーってこんなに毒舌やったっけ」
「次千歳ー」



ポキッ
「ジブリ祭、はじまるよっ!」


「始まんねぇよ、何も始まんねぇよ」
「標準語ー」
「笑顔だけはパーフェクトやな」
「そりゃジブリだからねぇ」
「呼んでいる〜胸〜の〜」
「歌わなくてヨシ」
「結局みんなダメやったな」
「私のが一番マシだった気がする」
「サランラップよりはスピードやろ」
「スピードやったらエクスタシーのがええやん」
「ジブリたい!天空の城ラピュタたい!」











ポキッ
「ノーエクスタシーサランラップライフ、始まるよ!」


「……」
「どや、オサムちゃん」
「…、ええんちゃう?」


――――
オチが行方不明。



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