「ねぇ謙也、帰りに肉まん奢って」
「お、おん。別にええけど…」
「今日一緒に部活行こ」
「……」
「明日の朝、郵便局に7時ね」
「…自分白石がおるやん」
「……だって…、」




「謙也ー白石ー、財前が呼んでる」
「おん」

 財前が3年の教室に来るなんて珍しい。あ、謙也がどつかれてる。そんなことを思いながらも、視線はいつでもあいつに釘付けだった。

「で、何だったの?」
「今日の部活来れへんって」
「ふーん、珍し」

 白石が黙って何かを考えてる様子。すると急に顔を上げて、私に向かって言った。ていうか顔近くない?


「…なぁ、なんで俺は白石で謙也は謙也なん?」
「は?」
「せやから、なんで俺は白石なん?」
「……いや、白石さん家に生まれたからじゃないでしょうか」

 何を言ってるんだこいつは。私と謙也は軽く軽蔑した目をしてるに違いない。


「せやのうて、なんで俺んこと名前で呼んでくれへんの?」
「…白石名前なんだっけ」
「ひど!おま、自分の彼氏やん」
「あぁ、思い出した。蔵ノ介くんだよね。あれ、白ノ介くんだっけ」
「ほんましばくで」
「で、なに?名前で呼べと?…蔵坊」
「金ちゃんと同レベやないか!」
「蔵さん」
「寅さんかっちゅーねん!」
「グラサン?」
「おま、なんやねん!普通に蔵ノ介って呼べばいいんや!」
「…ていうか、白石から白石を取ったら何が残んの」
「色々残るで。エクスタシーとか…エクスタシーとか」
「いや、部長とかバイブルとかあるやろ」
「ねぇよそんなもん。贅沢言ってんじゃねえよハゲ。せいぜい水とカスが残るくらいだわこの野郎」
「口悪ぅぅ!!ほんま自分どないしたん?今日めっさ機嫌悪いやん」


 うつむいた柚の手を白石が握る。あーこれがいわゆる修羅場やんな。今さらながら今朝の出来事を思い出した。
 しばらくすると、ひっく、とすすり泣く声が聞こえる。え、泣いとる?

「え、泣い…え?」
「白石のハゲ!変態エクスタ野郎!」

 柚は、白石の手を思いっきり振り払って駆け出した。ていうか捨て台詞それかい。


「な、なんやねん…」
「“白石のことを好きな人はいっぱいいる”」
「なん?」
「“女子に笑顔振り撒くなバカ”やと」
「なんやそれ…。嫉妬か?」
「追いかけなくてええんか」
「…っ、」


 翌日、二人は仲良く登校してきましたとさ。


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