もっちゃもっちゃ。規則正しく小さいドーナツを口へ運ぶ。

(やっべー!まじうめー。超やみつきになる!)

 教室では大人しいキャラゆえに心の声をクラスメートに聞かれないよう、私は無表情でもっちゃもっちゃとドーナツを食す。あぁもう本当、美味すぎてハゲる。

 普段から、幸村に宿題をやらされたりチャリで送り迎えを強要されたり、もちゃもちゃ遊び心溢れる仁王と赤也に靴に画鋲をしこまれたりバケツの水をぶっかけられたり。もちゃもちゃこれもうマネージャーの仕事超えてね?いじめじゃね?
 そんな身を削るような毎日でたった一つの癒しが、このドーナツだった。もちゃもちゃ本当はあんこが入ってる方が好きだが、手持ちのお金と内容量を見てこっちに決めた。学生の悲しい金銭事情だ。あぁ、早く稼げるようになりたいなー。


「あ、ドーナツ!!」
「…いる?」
「いるいる!頂戴!」
「ほれ」


 運悪く教室に現れたブン太とジャッカル。私の平穏な教室ライフをことごとく邪魔するテニス部の奴らだ。ジャッカルは…まぁ存在自体でいいや、ブン太は私のおやつをキラキラした目で“くれるの?それくれるんだよね”と訴えてくる。これに反抗すればブン太が幸村にチクって、何故か私が鉄の制裁を受けるので(本当、なんでだ)毎回仕方なしにあげるのだ。ポッキーだったらまだいいんだけどなぁ、ドーナツは痛い。


「ありがとな!お礼に今度奢るから。ジャッカルが」
「俺かよ!」
「まじでか。じゃあこの前駅前にオープンしたケーキ屋さんで頼むわ。行きたかったんだよねー」
「え、それ初耳なんだけど!」
「やっと神奈川にも来たらしいよ、あの有名な店が!」
「うへー!もう今日の部活終わったら行こうぜ!ジャッカルの奢りで」
「たーのしみだー!ジャッカルありがとー!」
「おい、それ本気か。今手持ち500円しかないんだけど」
「「幸村に頭下げて借りてこい」」



 その後、死にかけたジャッカルをひっさげてブン太と私はるんるんでケーキ屋に向かった。ドーナツといいケーキといい、今日は楽しい1日でした!



(え、お持ち帰りもいいんですか!まじですか!いや、念のためもっかい言ってください…!……ヘブンがぁぁぁヘブンが見えるぅぅ!!じゃあモンブランとミルフィーユと、あ、キャラメルプリンも追加で)
(おいぃぃ!俺を破産させる気か!)
(何だよ、幸村に借りてきたんじゃないの?)
(哀れに思った真田が余分に貸してくれた)
((ひゃっほぉぉお))



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