私は今、必死になってシャーペンを動かしている。右手右腕が死にそうだ、もげる。これもそれも、この前のテストで過去最低点を記録してしまったのが悪い。一桁とか本気で笑えない。何とかなるだろぃ、そうだよねアハハー。そんなことを言っていた過去が懐かしい。ブン太まじ死ね。


「なんで俺まで付き合わされてるんだよ」
「連帯責任」
「何だよプリント10枚とか。激しく帰りてぇよ、お前がやれよー」
「ポッキー一週間分」
「よし、手分けして頑張ろうぜ」


 数学は元々苦手なのだ。苦手な教科ほど勉強が億劫になるのはない。
 何とかなるだろ精神でテストを受けたらコレだ。返却時の先生の苦笑いは忘れられない。どうせなら怒ってくれればよかったのに、ごめん先生まじごめん。
 席に戻って真っ白な回答用紙を見てフリーズしてると、ブン太が笑顔で帰ってきた。ニヤニヤして見せびらかしてきたそれは、見事に平均を越えている。裏切りやがったなコノヤロー!「おま、これはねぇよ!何だよ9点って」爆笑したヤツのこめかみをこれでもかってくらいにひねりあげ、ヤツの回答用紙を紙ヒコーキにして空高く飛ばしてやった。…空高く飛ばなかった、それは窓に届く前に垂直降下で地に落ちた。くっそ、あんなに振りかぶったのに情けない。見れば、ブン太は「ざまぁ」と言ってまたニヤニヤしてた。調子のんなよこの赤毛、今度は顔面に正義の鉄槌を下してやった。

 そんなこんなで、お約束通り職員室に呼び出された私は、裏表にびっしり連立方程式やらグラフやらが書かれたプリントを頂いた。ちっとも嬉しくない。


「それ、今日中に提出な」


 ふざけんな。先生のメガネ、ひねりつぶしてやろうか。が、しかし。私には更にプリントを+10枚にされる余裕はない。大人しく引き下がった。今度下駄箱に温めた牛乳流し込んでやんよ!

 そして、今に至る。


「よし、あと8枚」
「…夕日が沈みかけてんだけど」
「わぉ、芸術的」
「芸術的なのはてめぇの頭だ」
「バカって言いたいのかこの赤毛め」
「あーもう、しゃべってないで手ぇ動かせよ!今日まじで帰れねぇじゃん」
「学校に泊まるのもいいよ」
「……帰る」
「わぁぁあ待ってくださいブン太様ぁぁあ!!すみません手伝ってください終わんないよー!」
「…仕方ねぇな、三枚くらいならいいぜ」
「じゃあ頼んだ」
「おま、これ全部じゃねぇか!」


 結局、鍵をかけにきた先生に早く帰れと怒られ、それを先生に伝えれば「今日中なんか嘘に決まってんだろーが」と笑われた。ふふ、あはははは。ブン太と二人で、ヤツに正義の鉄槌を下してやった。


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