「キモい!キモすぎる!」
思えば5日ほど前から様子がおかしかった。妙にソワソワしてるかと思ったら急にキリッとしたり、身体をくねくねさせたり。そして昨日、すごく視線を感じたので振りかえれば常にギラギラした目で見られてた。私が何をしたというのだ。更に極めつけに今日、何故か知らないがものすごく怒っているようで、朝練で部員が訳もわからないままいつもの三倍くらいしごかれていた。
こんな跡部を誰が想像しただろうか。何かの前兆なのではないか。
「こんな跡部キモい以外の何ものでもない!何とかしてよ忍足、もう吐きそう」
「ほれ、エチケット袋」
「本当に吐かねぇよ!」
「ほんま何なんやろうなー」
「ダメだ、震えが止まらない」
「……あ、せや」
「何だよ関係ないことだったら吊るすよ」
「昨日、跡部の誕生日やったわ」
「……ふーん」
そうかそうか。誕生日か。誕生日の翌日に機嫌が悪いひとなんてそうそういないよ。今だってすごく視線を感じる、睨まれてる気がする。
「がっくんに年の数と同じ画鋲を靴に入れられてたりして」
「部活ではお祝いな雰囲気なかったで」
「まぁファンがいるからいいんじゃない?」
「いや、意外にすねてるとかあるんやないか」
「可哀想じゃん、忍足画鋲とかあげなよ」
わっはっはー、と私たちは笑う。ふいに影がさしたかと思えば、それは跡部だった。見下ろされる。すっごい恐い……いや、むしろ面白い。ぷぷっ。
「あとべん拗ねんなよ(にやにや)」
「おいコラてめぇ」
「すみません!!」
なんだこの有無も言わせない雰囲気。樺地カモン、汗が尋常じゃない。
ガタッ、胸ぐらをつかまれた。何これ殴られんの。私何したっけ、今までの思い出が走馬灯のように頭を巡る。
「ちょ、暴力はよくな…」
――ちゅ。
柔らかい何かが唇にあたった。間近には跡部の顔。え、私キスされた?
「え、」
「今はこれくらいで許してやるよ」
跡部はいつものようにニヤニヤして去っていった。女子の悲鳴が聞こえる、そういえばここ教室だった。
(結局なんだったんだ…)
(本人に聞いてみればええんちゃう(にやにや))
――――
跡部は誕生日プレゼントが欲しかったみたいです。