私は噴水を囲う、膝の高さくらいしかないコンクリートに座っていた。
辺りを見渡すと華やかな印象はあまりなく、一言で言えばセピアでモノトーンな色合い。
何かがおかしいと思い、見上げてみれば空が見えなかった。
(植物すらない………)
建物と建物の間から遠くに無数の光が見える。
どこかで見たことある光景に脳がついていかない。
(神………羅………………?え、神羅!?)
光が眩しすぎてよくは見えないが、確かに光の中の看板にはそう書いてあった。
私はこの状況が理解できなかった。
撮影に使うにしても大規模すぎる。これは一体どういうことなのか。
(この風景CCで見たけど………向こうは確かLOVELESS通り、か)
そっちにも行ってみようかなと立ち上がる。
すると後ろからたくさんの人々が走り去っていく。
まるで何かから逃げるかのように。
「あ、あの………すみません!あの、どなたか………!!」
声をかけても誰も私に見向きもしない。足も止めない。
最初から見えていないかのようだった。
その時目の前を通り過ぎる人の波を遡ってくる人がいることに気付いた。
その人は出会うはずもない、黒髪で剣を持った彼だった。
思わずじっと見ていると彼と目が合う。
「何でお前は逃げないんだ?」
「?」
「1人だけ違うプログラミングか?………なーるほど、助けながらやれってことか。さすがアンジール………」
そう言ってうーん、と何か考える仕草をした。
「とりあえず守ってやるから下がってな」
どこまで下がればいいのかわからなかったが、彼が上ってきた階段近くまで行く。
彼の方を振り返ると猛スピードでベヒーモスがこちらへ向かって来るのが見えた。
「あ、危ない!」
「よゆーよゆー!まぁ、見てなって!」
そう言って彼は剣を抜く。
重そうに見える剣も軽々扱い、魔法も使いながら戦っている。
遠くで見ていても迫力のあるベヒーモスを簡単に倒してしまった。
私は彼に駆け寄ろうとしたが、後ろから肩を掴まれる。
目の端に銀色の髪が見えた。
(セ………セフィロス!!)
肩を抱かれたまま無言で歩き出す。
すっ………と刀を抜くセフィロス。そのまま彼に鋭く突き付けた。
「敵に後ろを見せるとは、よほどの自信家か愚か者だ」
「っ………!!はぁ〜………」
ため息をついて彼は両手を上げたまま後ろを向いた。
「ど、どうして………」
セフィロスを見たからなのか、人質のように私も隣にいるからなのか………彼は目を見開いて驚いていた。
そして突然激しい剣のぶつかり合いが始まった。
セフィロスはさすがと言ったところか、私の肩を抱いたままでも冷静に刀を振るっている。
何か言いたくても………2人を止めたくてもこの激しさでは舌を噛みそうだった。
「終わりだ」
彼の剣が弾かれる。
確実にセフィロスの刀が彼の心臓を狙っていた。降り下ろされる瞬間がスローモーションのように見える。
(………まずい!!)
私がセフィロスの手を押し退けるのと、誰かが刀を受け止めたのはほぼ同時だった。
「さすが、アンジール」
(アンジールの速さにも目がついていかなかった………!)
一度私をチラッと見て、アンジールはセフィロスを睨み付ける。
セフィロスを見上げると、何となく微笑んでいるような表情だった。
「訓練中止!」
携帯を操作してアンジールが中止の合図を出した。
そう、これはすごくリアルな訓練だったのだ。
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