訓練開始 2 




ジュノンに着くと早速神羅兵に敬礼された。
やっぱり1stのソルジャーともなると憧れてミッドガルに来た者も多いため、知らない者はいないらしい。


「報告します!
現在討伐対象は海岸付近に潜伏中!海の魔物であり、いつ岸に来るかわからない状況です」

「そうか………長引きそうだな」

「何ていう魔物ですか?」

「はっ!ボトムスウェルだという話ですが、一瞬だけしか確認できなかったので断定はできません」

「わかりました。ありがとうございます(ボトムスウェルって本編に出てきたアイツかな………)」


どうやって討伐するかアンジールに聞けば上がってくるのを待つしかないと言われる。
しばらく待つことにした。








待っている間、私は1st2人に手解きを受けていた。アンジールの説明はとても解りやすい。
セフィロスは感覚でしかわからない、微妙なコツなどを教えてくれる。


「なかなか筋がいいな」

「いえ、教え方が素晴らしいからです。
それにしても敵は海から上がってきませんね………オフなのにいいんですか?」

「ああ、たまにはいいだろう」


休憩でもするかという話をしていた時、突然海の様子が変わった。
私にもわかる程に海が、波が、風がざわついている。


「くるぞ」


ピンと張りつめた緊張感が走る。
初実戦に足が震えるが、1stが2人も居るのだから大丈夫と自分に言い聞かせた。
海から出てきた魔物はボトムスウェルとは色違いの、もっと毒々しくて見るからに強そうなヤツだった。


「ツカサ、魔法を中心に戦え!マテリアは午前に教えた通りだ。
どんなことがあっても守ってやるから思い切りいけ!」

「………っ!了解!」


きっとアンジールには足が震えているのがバレていたんだと思う。
手持ちのマテリアをチラッと確認する。

ケアル、サンダー、ファイア、ぬすむ


(本編で見た時より強そうな相手にこのマテリアって………!!)


思わず愕然としていると後ろから頭をポンッとされる。美しく流れる銀髪が見えた。


「使え」

「これって………エアロラ!」

「お、おい!まだ戦ったこともない奴に強いマテリアは………」

「大丈夫だ。………見てろ」


私は言われた通り思いっきり、そしてこれ以上無い安心感に包まれながら詠唱を始めた。
詠唱の呪文はマテリアが私に語りかけてくれる、そんな気がした。


「2人共、下がって!………エアロラ!」


ボトムスウェルも風属性が弱点だったからか、毒々しいボトムスウェルも激しい雄叫びをあげて海へ帰っていった。


「無事に使えてよかったです。お返しします。ありがとうございました。
安心して戦えたのも2人のおかげです」


そう言いつつ、視界がおかしいことに気付いた頃には立てなくなっていた。


「あ、あれ?」

「だから強いマテリアはダメだと言ったんだ………MPの消費が激しかったのだろう。無茶させるために連れてきたのではない」

「………はい。スミマセン」

「まぁ、初めてなのに臆せずよく頑張ったな。そこは評価しよう」

「あり、がとう………ござ………(あ、目開けてられない………)」


そして私の瞳は閉じられた。
最後に見たのはアンジールの優しい笑顔と、頭を撫でる大きくて温かい手のぬくもりを感じた。






「………どういうつもりだ」

「何の話だ」

「最初からおかしいと思っていたんだ。お前が“会ってみたい”だなんて」

「おかしいのはどっちだ」

「何だと?」


そして2人の睨み合いが始まった。
普通の人間には堪えられない程の鋭い視線。


「この娘、変だと思わないか?」

「何を言って………」

「いや、やめておこう。何でもない。
ここまで全て演技なら、この娘大したものだぞ」

「………帰還する」






私が次に気付いた時には、ミッドガルのアンジールの部屋だった。

一応セフィロスにお礼のメールをしたけど返事は無かった。



それからセフィロスに会うことはなく、私は日々の訓練に勤しんだ。
ザックスと手合わせも度々した。力では負けてしまうものの、作戦を考えれば隙をつくくらいはできるようになってきた。
アンジールもその度に教えてくれた。生き残る術を。





そして、遂にこの日が来たんだって思った。









私は明日ウータイへ行く。









  end 
(4:4:12)
bkm