「ジタン、無事だったん………ビビ!?」
ジタンが両手に抱えてる人を見て驚いた。
数時間前まで一緒だったビビとスタイナーがぐったりしている。
「ブランクー!シナー!手伝って!!」
私の叫び声に驚いた2人がジタンを見てさらに驚いた。
「こっちに運ぶずら!」
「薬を持ってくる!」
「ビビ!お兄さん!絶対死なないでよ!」
私はビビに付き添い、スタイナーはベネロとゼネロが連れていった。
2人は思った以上にぐったりしていて、まさか死んでしまうのではないかといてもたってもいられなかった。
「ケガ人がみんな回復するまでタンタラスはここで待機すんぞ!!
身勝手な行動は許さねえぞっ!!」
ビビの看病をしていると、船内にバクーの大きな声が響き渡る。
遠くでジタンの声が微かに聞こえた。
(女を見すてるなんて見そこなったぜ!だっけ?)
「う、うんん………お姉ちゃん………」
「ビビ!気分はどう?大丈夫?」
「もう種を取り除く薬は飲んだから大丈夫だろ。少し休めよ」
「うん。ちょっとクラクラするけど………大丈夫。それよりボク、あの人にお礼言わなきゃ」
「呼んできてやるよ。待ってな」
と、ブランクは部屋を出ていった。
先程のバクーの言葉を聞いてジタンが近くにいることに気付いていたようだ。
(そっか、ここってバクーのいるところの真下だもんね。絶対にこの部屋の前を通るの知ってるんだ)
さすがはブランクだなと思っていたらジタンが部屋に入ってきた。
「あっ………助けてくれてありがとう………」
「ビビを助けてくれてありがとうございました」
「へへっ!礼には及ばねえって!」
聞かなくても知っている。ガーネットを助けてあげてねってビビがお願いするところ。任せておけ!って明るく答えるジタン。
その後どうなるかも知っている。いつ見ても辛くなる瞬間。
「犠牲」の2文字がこんなにも重く感じる日がくるなんて。
そして私は静かに部屋を出た。
(ブランクのところに行こう………)
■ジタンside
ビビがお礼を言いたいと部屋に行けばツカサもいた。
でも俺たちに気を利かせてそっと部屋を出ていってしまった。まだツカサとちゃんと話すらできていないのに………
それに、あまりにビビがしょぼりしていたから俺は出来るだけ明るく元気付けようと思ったんだ。
「必ず助けてあげてね」
というビビの言葉につい「任せておけ!」と言ってしまった。
ボスを説得出来なかった俺はどうしたらいい?
「あんな約束しちまったけど、本当に助けられるのか………」
ふと、ガーネット姫と会った時のことを思い出した。
(そういえば、あの時………
本当に特別な気持ちになったんだ………
運命の人?う〜ん、そういうんじゃなくて………
どう言えば、いいんだろう………
初めて感じた気持ち………
初めて?いや、初めてじゃない。俺はこんな気持ちをどこかで………)
そこで何かが頭の中を過った。
あれはガーネット姫じゃない。モヤがかかったように曖昧になってしまう。
しかし今はそれが誰かなのかわからなかった。
「考えるまでもないな。見殺しにはできない」
■ツカサside
ブランクに言われ、私は種を取り除く薬を用意していた。
(みんなわかってるんだね、ジタンのこと。だから薬や道具の用意とか言葉を交わすことなくやってる。
仲間、か………
私はこの先どうしたらいいんだろう。戦う術もなくて………知ってるのはこの物語の未来だけなのに。
知ってるだけじゃ役になんか立てないんだってさっき痛いほどわかった。
でも未来を知っていることを誰かに知られて、大きく変わってしまうようなことはしたくない………)
「ツカサ、薬の用意できたか?」
「あ、うん………」
「どうした?元気ないな。悩み事か?」
「うん………私、これからどうしたらいいのかな。ジタンについていっても役に立たないの、わかってる。
でもそれってタンタラスに居てもきっと同じなの。
そうしたら私はどっちについて行くのが正解なのかなって………」
「正解なんて無いだろうよ」
「え?」
「俺たちが進む道なんざ、最初から正解なんかねぇ。
だからこそ不正解でも後悔だけはしない道を必死こいて探すんだよ」
ブランクにそう言われると、隣の部屋から足音が聞こえてきた。
(ジタン………もうガーネットを助けに行くんだ)
私たちの前を通ろうとしたジタンをブランクが呼び止める。
ついていくなら今しかない………そうわかってはいるものの、手の中にある薬の小瓶に映る自分は冴えない表情をしていた。
「ほら、コイツをもってけ、ジタン」
ブランクが私の手の中にある物を指差して言う。
種を除去する薬のことだ。
「ホレ薬なんて俺には必要ねえよ。これ以上モテちゃったら困るだろう」
「そんなんじゃねえ!
こいつはオッサンたちが食らった種を取り除く効果がある薬さ」
「な〜んだ、そういうことなら早く言ってくれよ!」
用意した薬をジタンに渡そうとすると、隣から手を押さえられる。
「ただし、ツカサも連れていけ」
「え!?」
「これが正解なのかなんて俺にもわからない。でもな、一緒に行かなかったらきっと後悔するんじゃないか?」
「………………」
俯いてしまった私に優しい手が肩に触れた。
パッと顔を上げれば、綺麗な笑顔の金色が視界いっぱい広がる。
「来いよ、ツカサ!何でかわからないけど、でも………
俺もお前と行きたいと思ってた!
どんな敵が来ても守るさ!だから一緒に行こう!!」
どうして何度も何度も
この手をとってしまうんだろう
その笑顔が眩しくて、眩しくて………
これが本当に夢ならば、まだ覚めないでいて。
(
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