■ツカサside
「私が彼らと同じ………どういうこと?」
あの黒魔道士に言われた言葉が頭から消えず、すぐ宿屋に行く気分にはなれなかった。
しばらく村の中をぐるっと歩いてはまた1周して、更に1周して………いくら考えても彼らとの共通点なんて1つも思い付かない。
(考えても仕方ない。直接………って夜はビビが行くからダメか)
どうしたものかと悩んだがこの後のことを考えるなら、今しか戻れないだろう。
「宿屋で休んで夜にビビのイベント………それからジタンの過去、か」
知ってはいるけれど、彼の過去は彼自身から聞きたかったな………なんてことを少し思ってしまう。
あれはジタンにとってもダガーにとっても大事な時間。
唯一彼の過去が本人から話されるイベント。
ダガーにしか話されなかった2人だけの瞬間。
つい無意識に割り込ませようとする自分に首を振った。もう、ゲームが好きとか憧れではないと、何度も何度も自分の中で確認したのだから。
「ジタンは青い光だけを頼りに旅をしたんだよね。すごいなあ、行動力があって………」
記憶を頼りにそのイベントをゆっくり辿っていくと、ふと何か違和感のようなものを感じた。
彼の探していた光と、私の探している光。
「青色の光、あれはジタンにとって故郷だと思っていた色…………
あれ?私が夢にまで見ていた“金色の光”っていつもジタンと重なるような気がしていたけれど、あれは本当にジタンなの………?」
考えれば考えるほど違和感が募り、自信が無くなってくる。
今まで私にとって“金色の光”とは、いつも助けになってくれているものだと思っていた。
何故“金色の光”が私を助けるのだろうか?
どうして“金色の光”なのか?
そもそも“金色の光”とは何なのか?
何故私は無意識に“金色の光”を頼っていたのだろうか。
次第にゆっくりだった足取りが速足へと変わり始めた。
黒魔道士が言う『同じ』はまだ全然わからないけれど、私も探さなければいけない。
『いつか帰るところ』が『本当に帰るべきところ』なのかを。
(あの光の正体を私は知らない。それがわかれば、きっと………)
目的地へ着くと、先程と変わらず黒魔道士が立っている。
声をかけると少しだけこちらを向いた。
「また、来ちゃった」
「そうだね。戻らなくていいのかい?」
「気分が変わったの」
「随分と自由なんだね」
「あなたたちみたいに私も自由なのよ」
「本当にそう思うかい?自分の意志で選んだと思った自由に、僕らの動ける時間があらかじめ決められていたとしたら………」
「あのさ、有限って“不自由”ではないのよ。
わかってるんでしょ。あなたたちは“自由”を選んだんだもの」
「それは………」
私は黒魔道士の言葉を遮るようにお墓の前にしゃがみこみ、手を合わせてしばらく目を閉じた。
本当はわかっている。私も、彼らも、みんなも。
だからこそ自分に出来ることをしていきたいって思うことも。
「ところで、さっきの話。
私と同じというのなら………1つ訊きたいことがあるの」
「なんだい?」
「“金色の光”に心当たりはない?」
「きんいろ………?」
少し目をパチパチさせてから、う〜んと考えこんでいる。
自分が目覚める前、もしくは目覚めた後にそんなものがあったのか思い出してくれているのだろう。
「悪いけど特に心当たりはないよ。でも、その“金色の光”というのは?」
「………手掛かり、かな。私の記憶の深い、深いところに刻まれているような気がするの」
「探しているんだね、君も」
「ええ、そう。自分の生き方を探すという意味では、私たちは同じかもしれないわね」
それからはこの村がどうとか、誰がここでお店をやっているだとか、チョコボのタマゴの話とか………普段の生活について色々聞いた。
一通り聞き終わる頃にはもう陽も沈みかかっていて、夜のイベントも近いだろうとその場を離れて夜の村を歩く。最後に村を1周し、アイテムの補充をしてから宿屋に戻ると丁度ビビが出ていくところだった。
(あちゃー、宿に戻ってイベント始まる前に寝てしまいたかったのに………!!)
ついいつもの癖で道具屋へ向かってしまった。癖って怖い。
過ぎたことは仕方ないのだが、どうしたものかと宿屋の入口に寄り掛かっているとジタンとダガーの話し声が聞こえてきたため、私は静かにその場を立ち去ることにした。
眩しい朝日で目を覚まし、すぐに村の入り口へと向かう。
そこにいた2人に大きく手を振って声をかけた。
「おはよー!2人共、早いね。どうしたの?」
「あ、ツカサ。どうやらこの大陸の北西で、銀色の竜を見かけたらしいの。
コデンヤ・パタでドワーフのひとたちが言ってたわ、出入りを制限されている『聖地』があるって………」
「クジャがこの大陸に何か秘密があるようなことを言っていたらしいぜ?」
「きっとそこに行けば、手がかりが………そうすれば、お母さまも………」
「そっか、じゃあ次の目的はその『聖地』だね。
あれ?そういえば、ビビはまだ?」
「もしビビがここに残るって言ったら………」
いつまで経っても現れないビビを咄嗟に村へ残ると思ったダガーの表情は暗くなる。
しかし村の奥からパタパタパタと走ってくる足音が聞こえてきた。
「まってよぉ〜っ」
「あ、ビビ。おはよー」
「お、おはよう、お姉ちゃん!
この村のみんなにね、たのまれたんだ。もっと外を見てきて欲しい、それでまた、いろいろ教えて欲しいって」
「ビビはみんなの期待を背負ったのね」
「ちっ、なんだ。せっかく両手に花っていう贅沢な旅になると思ってたのに………」
「ナニ言ってるアルか。ワタシこんなとこに置いてかれたら飢え死にしてしまうアルね」
「そういやおまえもいたんだっけ………」
バタバタバタッと走り込んできたクイナは不満そうにしていたけれど、ここで満足に食事を楽しめなかったのだからかなりのストレスを感じたことだろう。
身の回りを最終確認し、私たち5人は村を出た。
「それじゃあ、行きましょ!
コデンヤ・パタへ!そして、その先の『聖地』へ!」
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